【はたらく細胞】ねえ、夢をみよう【ヘルパーT細胞】 (ページ5)

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花園ページ5

訓練は班長さんの協力もあり、滞りなく終わった。
ワクチンとして学んだ情報を彼らに託し、体内で得た情報をも共有する。
日本人死亡原因第一位でもある強敵と対峙するその時の為に、日々の地道な仕事は欠かせない物だ。
真剣に取り組まなくてはいけないのはわかっているけれど、班長さんが何気なく漏らしたあの一言が気になってしまって、何処か集中できずにいた。

どうしてメガネが出てくるのかもわからない。

「Aさん。司令がお待ちです。こちらへ。」

「はい。」

美しく伸びた背筋、艶やかな金髪の制御Tさん。
彼女に導かれ、やけに豪華な温室へと足を踏み入れた。

外よりも少し気温が高く、肌が敏感にその差を感じ取る。
丁寧に手入れされている様子の花々が咲き乱れ、中央にはアンティークなティーテーブルが置かれていた。三段にわかれたスコーンやケーキ。そしてサンドイッチ。
金色の縁に彩られたティーカップには、注がれたばかりの紅茶が用意されていた。

香り高い。上質な茶葉だった。

「遅かったじゃないか。」

「すみません。ひとつ前の用事がすこし、伸びてしまって。」

「特に異常も起きていないし、僕は構わないよ。ただ紅茶が冷めてしまうと思ってね。」

「...はあ。」

このどれもこれも、経費が何処から落ちているのかは聞くまい。
というか聞きたくない。とりあえず実費でない事は確かだろう。

「どうせあの暑苦しい所にでも行ってたんだろ。あーやだやだ。」

「司令も一度くらい参加してみたらどうですか。案外楽しいかもしれませんよ。」

「冗談きついな。考えるだけでぞっとするね。大体僕が鍛錬することに何の意味もないじゃないか。」

「物は試しですよ。」

「やめてくれ。」

苦虫でも噛み潰したような顔で、この上なく嫌そうな顔をする。
情熱だとかやる気だとかそういった類の物を感じさせないこの眼鏡は、相変わらずの内勤満喫っぷりがすごかった。

柔らかくでクセのない味。いつも通り、カップに注がれた濃厚なすい色は、私が気に入っているアッサムだった。
紅茶に映り込む自分の顔をみつめながら、司令も趣味はなかなか悪くないななんて失礼な事を考える。

「司令って、アッサムお好きなんですか。」

「僕が？」

「ええ。いつも出して下さるので。」

「....ああ、まあね。」

言葉を濁し目線をそらす彼。
なんだ。みんなはっきりしない。