【ハコヅメ】同期しか勝たん

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先輩の名前は、菖野(しょうの) 翔(かける)になりました！

下の名前を提供してくださった青折り紙さま、ありがとうございました！


***


side 先輩



被害者の子への対応をミスって以来、海月は落ち込んでいた

本人は落ち込んでいるのを見せないようにしているつもりなんだろうが、伊達に海月のペア長をやっていない俺の目は騙せない

もちろん仕事はちゃんとこなしているし、俺が飲みに誘ったらいつものように嬉しそうについてくる

だが、ふとした瞬間にため息をついていたりする


海月らしくない


同期のヤツとの飲み会でもすれば多少気は晴れるんだろうが、互いのスケジュールがなかなか合わないようで、しばらくできていないそうだ


今回の件については、あいつを過信してた俺にも非がある

川立交番管内は比較的平和で、ほとんど交通の取り締まりしかやったことなかった海月は、今回のような事件は初めてだった

それなのに "出来るだろう" という憶測だけで被害者の子の相手をさせてしまった

ペア長として、責任をとる義務がある


かといって、何をすれば良いかも分からない

悶々とした数日間を過ごしていたある日、今回の件を相談していた同期から、町山署に合同捜査本部が設置されるらしいという情報を得た

被疑者を目撃した人の証言から似顔絵を製作し、それを元に前科者を当たってみたら、似ているヤツが見つかったらしい

これだ、と思い、急いでハコ長に話をする



「今回、海月は失敗を引きずっています。あいつらしくない。
挽回のチャンスをあいつにやるためにも、合同捜査本部に行かせてください」


「でもねぇ……ただのハコ勤務で、しかも別の管内の警官を、そんなところに入れてもらえないと思うよ？」


「分かってます。
でも、これを乗り越えなければ、あいつはこの先ずっと後悔し続けることになる。あいつはまだ二十歳なのに。
それに、挽回のチャンスをやることも、新人教育の一環だと思いますが」


「でも…」


「海月の普段の働きはかなり優秀だと思います。
先日もヤク物使用者を検挙したことは、ハコ長もご存知でしょう？
これほどの働きがあれば、もしかすると入れてもらえるかもしれないと思いませんか？」


「そうねぇ……」


「署長に話だけでも通してください。お願いします」


「……分かった。話はしてみるよ」


「ありがとうございます」


「でも、あんまり期待はしないでよ？」



ハコ長に言われなくても、最初から期待はしていなかった

でも、可能性がないわけではなかった

その僅かな可能性に、俺は賭けた

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