【ハコヅメ】同期しか勝たん

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『それじゃあここ座って』



交番に着き、奥の部屋へと通す



『お名前は？』


「……蕪木、千雨です」


『千雨ちゃんね。家の電話番号とか分かる？』


「…親今仕事なので、家に電話しても誰も出ないと思います」


『そっか……
じゃあお母さんの携帯電話の番号は？ お父さんでも良いけど』


「…覚えてません。スマホに登録してあるだけで」


『今、スマホは持ってないの？』


「学校に持っていっちゃいけないルールなので」


『じゃあ学校に電話しよう。その制服、三丁目の交差点にある高校のだよね。
そしたら電話番号は……』


「…あの、」


『ん？』


「……私、大丈夫ですから」


『……え？』


「被害届も出しません。親にも連絡しなくて大丈夫です」


『大丈夫って……
だってさっきあんなに震えて、』


「本当に！ 大丈夫ですから。突然のことで驚いただけですから…
ご迷惑おかけしました。失礼します」


『ちょっと待っ…』


「海月！」


『先輩……』



千雨ちゃんを追いかけようと交番を出たところで、先輩に名前を呼ばれ、立ち止まる



「これは、任意で話を聞いているだけだ。強制じゃない」


『………はい』


「お前、あの子が、本当に大丈夫だったとは思ってねぇよな」


『……はい』


「あの子が大丈夫なんて言ったのは、お前の対応が悪かったのが原因っていうのは分かるよな？
どこに問題があったかは分かるか？」


『……分かりません』


「…お前は、あの子に寄り添ってなかった」


『そんなことは…！』


「ないことは分かってる。ただ、寄り添ってる "ように見えなかった"」


『……』


「何かあの子に言葉をかけたか？
一言でも、"辛かったね" とか言ったか？」


『……言ってません』


「その上お前は、相手の調子に合わせずに、一方的に話を進めていった。
そしたらあの子も、"被害を訴えてもこんな聞き取りをされるんだったら、何も言わない方がいい" と思うのは当然だろう」


『…はい』


「あの子が被害届を出さないと言ってる以上、俺たちができることはパトロールを増やすことぐらいだ。
てことで、パトロール行くぞ」


『…はい』


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