【短編集】Dynamite (ページ32)

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# 俺だけなの？ Shota Watanabe ページ32

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(年下彼氏渡辺さん)

突然「あ、今めっちゃキスしたい」って思った。

思っただけで止まれる程賢い男じゃないから

ソファに座る彼女を無言で押し倒してキスをした。

Aも最初のうちは驚いてたけど

すぐに俺のペースに乗ってきてくれて

かれこれ3分くらい触れるだけのキスをしてた。

『しょうた、口開けて』と言われて素直に開くと

彼女の舌が俺の歯列をなぞる。

思わず声が漏れて下半身もゾクッとした。

「俺もする」とやり返してはみたけど

Aはふふっと笑うだけ。

なんか、悔しくなってきた。

決して上手とは言えないだろうけど

「好き」って気持ちを全部乗せて

舌を絡ませるディープなキスをお見舞いした。

それでもAは全然余裕そうで

俺の舌を弄んでは楽しそうに笑みを浮かべていた。

作戦失敗。悔しさがデカくなるだけだったっぽい。

Aの下唇を甘噛みしてから唇を離す。

2人を繋いでいた銀の糸が途切れたタイミングで

Aが『どうした？』と声をかけてくれた。

「こんながっついてさ」

「なんか、バカみてぇじゃん...... 」

29にもなって彼女にこんな貪るようなキスして。

俺だって29年も生きてきたからそりゃ

恋愛のひとつやふたつはしてきたつもりだけど、

相手が年上ってだけで途端に余裕がなくなんの。

こんなこと初めてだから俺だってパニックよ。

......てか急に恥ずかしくなってきたわ。

恥ずかしすぎて Aの顔なんて見れない。

見れないし、見られたくない。

目線をAの顔から少し下げたら胸があったから

急いでそこに顔を埋めた。

「俺だけなの？」

『え？』

「こんな余裕ないの俺だけなの？」

Aにキュンキュンしてほしくて

もっと、って求めてほしくて

一生懸命俺なりにやってきたけど

結局 Aの方が一枚上手で

俺の方がキュンキュンして Aを求めてて...

めちゃくちゃ情けねぇじゃん。

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