【短編集】Dynamite (ページ27)

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「やっほ」

『目黒くん、』

「寒いのにありがとう、出てきてくれて」

目黒くんはいつだって優しい。

それは付き合う前から付き合ってた頃から

なんにも変わってなかった。

「あ、それまだ持っててくれたんだ」

『うん、なんか可愛いから勿体なくって』

「それ」というのは今日履いてきたハイヒール。

目黒くんが付き合ってた頃私にくれたものだ。

デザインが可愛いから、それももちろんある。

でもそれ以上に「目黒くんから貰った」という

“ 目に見えない付加価値 ” があったから

捨てられなかったんだと思う。

自分から振ったのに貰ったものは捨てられないなんて

未練ありまくりなのがバレバレだ。

「なんか嬉しいな」

『へ？』

「いや、てっきり捨てられてると思ってたから」

「嬉しいな」なんて言わないでよ。

そんなの、私のことが好きみたいじゃん。

妙に期待してしまって、脈がどんどん速くなる。

「俺が来る飲み会にそれ履いてくるとか」

「まだチャンスあるって思ってもいいの？」

そう言って私の目の前までやってきた目黒くん。

恥ずかしくて後ろめたくて俯いてるから

目黒くんがどんな表情をしてるかは見れない。

見れないけど、目黒くんのことだから

きっと優しい顔をしてるんだと思う。

『そんなこと聞くとか、』

『私も、私も期待していいの？』

緊張で上手く言葉を紡げないし

強がって可愛くない言い方になっちゃったけど

頑張って私だって気持ちを伝えてみた。

三秒くらいの沈黙の後

目黒くんに「こっち向いて」と言われて

恐る恐る、目黒くんの顔の方を向く。

想像通り、目黒くんは優しい笑顔を浮かべて

私の目を真っ直ぐ見つめていた。

その顔を見た途端、気持ちがぶわっと溢れてきて

ずっと言えなかった言葉が嘘みたいに自然と出てきた。

『あの時はごめん、突然振ったりなんかして』

『私、やっぱり目黒くんのことが好き』

『だから「ちょっと待って」

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