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ブゥゥ〜、ブゥゥ〜

携帯のバイブ音で、ポケットやカバンを漁りだす薮くんと俺。
ビジネスマンの悲しい習性である。

「ごめん、俺だった。」
そう言って、薮くんが席を立つ。

えーっ、ちょっと待って……

「何かすみません、お邪魔しちゃって」

「?……いえ」

沈黙に耐えられない……

「気付かれましたか?ここのお店は入口からテラスまで、すべてフラットになってます。車椅子でもベビーカーでも入れるように、席の間も余裕ある作りになってます。内装は……」

ベラベラとプレゼンのように捲し立てる俺の話を
黙って聞いてる山田さん。




「お待たせ致しました。」

店員さんが、何か運んできたので話は中断。
助かった〜

コトリとテーブルに置かれたのは、いちごとクリームがたっぷりのパンケーキ。

薮くんが頼むはずないので山田さんか…

「ありがとうございます。」

小さい声だけど、ちゃんとお礼を言えるっていい子だなぁ
しかも、クールな見た目で、いちご…って
まさにギャップ萌え!

「かわいい…」

思わず口に出してしまった。

山田さんが驚いて俺の方を振り向いた。長い前髪で隠れていた瞳が顕になって今度は俺が息を飲む。
そんなじっと見つめられると困ります!

「キレイ…」

ああ、また心の声が漏れてしまった。

山田さんの顔がみるみる赤くなって、俯いてしまう。
顔にかかったサイドの髪を耳にかけたが、その耳まで真っ赤で申し訳ない。

「ごめんなさい!変な意味とか全然ないですっ」

いや、絶対変なんだけど…
焦って言い訳をぐるぐる考えてると、薮くんがやっと戻ってきてくれた。

「お待たせ〜、伊野尾から。俺も戻ったほうがいいかな?」

「いやいやっいや!大丈夫です。本当っ!今日はごゆっくりっ!」

薮くんが不思議そうな顔をしていたが、俺は慌ただしく席を立つ。

「もっ戻りますね!失礼します。」


ちょうど注文したものも出来たようで、カウンターで受け取るともう一つ大きな紙袋を渡された。

「あちらのお客様からです。」
店員さんが指す方をみると、薮くんが

「差し入れ〜」
とフニャフニャ笑って手を振っていた。
かっこいい。
俺はこれでもかっと言うくらい深くお辞儀をしてお店を後にした。


ふと反対の歩道からテラス席に目をやると薮くんが、山田さんの前髪を何気なく指ですいている。

なんだよ、ラブラブじゃんか

ハァ…俺の恋は始まる前に、終わったのだった。

・→←それぞれの出会い



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Mizuki(プロフ) - このお話好きです!  (2022年6月25日 20時) (レス) @page18 id: e4dddfb1f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちー。(プロフ) - おうじろうさん» 応援してます!!! (2020年6月21日 23時) (レス) id: fdf3240231 (このIDを非表示/違反報告)
おうじろう(プロフ) - ちー。さん» 読んでくださってありがとうございます。週一更新出来るように頑張ります。 (2020年6月21日 22時) (レス) id: 499cfd1f77 (このIDを非表示/違反報告)
ちー。(プロフ) - 初めまして。すごく続きが楽しみです!更新頑張ってください! (2020年6月19日 21時) (レス) id: fdf3240231 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おーじろう | 作成日時:2020年6月15日 0時

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