恋雨〈ars,n〉 (ページ2)

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先生ページ2

高校2年の夏

中間考査で見事に赤点を叩き出したわたしは科学の補習を受けることになった

補習初日の朝、憂鬱な気持ちで家を出た

ジリジリと太陽が眩しく気温と湿度は高い
地下鉄のクーラーは相変わらず効きすぎていて頭を締め付ける
夏は全てのことにやる気がなくなるなと痛感する

理科室に入ると生ぬるい風がわたしを包む
くしゃみをしたわたしに
二宮先生は薄い唇をふにゃりと曲げて微笑んだ

｢おはよう｣

｢おはようございます｣

先生のいつもの席に椅子を運び、早速補講が始まる

カラコロと氷が鳴る先生のアイスコーヒーが減ってゆく
大きな窓から吹く風にふたりの髪がゆらゆら揺れる

｢じゃあ、この問題から解いてみて｣

わたしの教科書を指さした先生は薄い縁のメガネを掛けてパソコンに向かい始める

こんなの掛けてたんだ、ってひとつ先生について知ってることが増えた

面と向かって話したのも初めて
基本的に人に興味がないわたし

理科室に響くのはわたしが紙をめくる音とシャープペンが走る音
そして先生がキーボードを叩く音とマウスのクリック音

スラスラ解けた問題に赤ペンで思いっきりペケを貰う、教えてもらう
の繰り返し

先生はわたしの顔とノートを交互に覗き込んで目を細めた

その顔がわたしは大好きだった

気づけば時計は12時を回っていた