君に失恋したから髪を染めた【羽風薫】 (ページ26)

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25話ページ26

sideA

A「ま、そんなこんなで今に至るって感じかなー」
桃李「…やっぱ、名前だけで苦労するんだね」
A「私はね。でも桃李は大丈夫。友達いるでしょ？」
桃李「…うん。でも、Aにはいなかったんだよね？…大丈夫だったの？」
A「その日から吹っ切れたよねー。次の日から学校に行ったよ。前はいない風にコソコソしてたけど大袈裟なくらい派手にね！」
桃李「た、例えば？」
A「ドアを大きな音を立てて開けたり、廊下のど真ん中を歩いたり？陰口聞こえたら近付いて同じこと目の前で言わせたり？やりたい放題やってやったよ？」
桃李「吹っ切れ加減がすごい！」
A「それもこれも薫がいるから大丈夫って思えたからこそなんだよね…」

本当に薫って存在は大きい。

桃李「…大きいね…」
A「何が？」
桃李「羽風先輩の器。僕だったら無理かもー」
A「えー？こんな私は嫌いー？」
桃李「嫌いじゃないけどちょっと怖いもん」
A「あはは」

そうかもしれないね。

(…私のこと…怖い…か)

桃李「だからね、僕分かったよ」
A「ん？」

桃李が抱きついてきた。
それを私は受け止める。
本当に小さくて女の子みたいだね桃李。

桃李「僕、Aのこと大好きだよ。ずっとずっと大好きだよ」
A「どうしたの急に…？私も大好きだよ？」
桃李「違うよ」
A「？」
桃李「僕の好きとAの好きは全然違う」
A「…桃李？」
桃李「僕前から考えてたんだ」

桃李が真剣な目で私を見た。

桃李「婚約の話、なしにしようよ。今日」
A「え？」
桃李「僕はAのことが大好きで、婚約出来たのも嬉しかった。僕達みたいな人って、好きな人と結婚できるかもわからないから…だけど、Aはそうじゃないから」

言いたいことが何となくわかってきた。
きっと桃李は、私のことを私以上に知っている。

桃李「Aに必要なのは僕じゃなくて羽風先輩だよ」

どう答えたらいいのかわからなかった。

桃李「それに！かわいー僕が誰かひとりのものになるなんて勿体ないもんねぇ！」

私に気を使っての発言だ。
桃李、本当にいい子だよ…。

A「…ありがと…でもね、桃李のことが好きなのは本当だよ」
桃李「うん。わかってるよ。ありがとうA」