君に失恋したから髪を染めた【羽風薫】 (ページ24)

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23話ー思い出ーページ24

sideA

薫「ねぇAちゃん」
A「ん？」
薫「さっきさあの子たちが言ってたんだけど«天祥院»って何？」
A「へｰｰｰｰｰｰｰ」

血の気が引いた。
頭が真っ白になった。

(…薫に…知られた…)

誤魔化す方法を考えてみるけど思いつかない。
焦った。
汗がダラダラと流れていく。

薫「なんかとってもお金持ちの家らしいんだけどAちゃんのことをそうだって言うんだよ。でもおかしいよね？Aちゃんと姓と全然違う」

それは使用人の姓を名乗ってるからでｰｰｰｰｰｰｰ

ｸｽｸｽｸｽ…

視界の隅で声を潜めて笑う同じ小学校の子たち。
目の前が赤く染まった。
頭に血が上って身体が震えた。
初めて、強く感じた怒りだった。

私はその子たちに近付いて掴みかかった。

ｰｰｰ余計なことを言ってくれたｰｰｰ

それだけに囚われ、我を失った。

薫「Aちゃん！！」

薫に止められてハッとした。
目の前で大声でなく小学校の子たち。

私は、とんでもないことをしでかしてｰｰｰ

薫「行こう！」

薫に引っ張られるがまま走った。
私はぎゅっと薫の手を握った。
そうでもしないと、真っ直ぐ走れそうになかったから。

家に帰ると使用人達が真っ青な顔をして私を出迎えた。

「何があったのですか？」
「この傷はどうして…？」

私は全部話した。
私が悪いってことも。
だけど使用人達は私を咎めず、ぎゅっと抱きしめた。

薫とは話さなかった。
拒否されるのが怖かったから。

数日、学校に行かない日々が続いた。
嫌でも行っていた学校なのに。
行きたくなかった。

使用人達はそれについて何も言わなかった。
私が1番恐れていたことが起こってしまったから。
«天祥院»の名前の重さを分かってくれているから。

部屋に閉じこもり、膝を抱えた。
この真っ暗な中から抜け出したい。
苦しいところから逃げたい。

A「会いたいよ…薫…」

私が呟いたその途端、窓が勢いよく開かれた。
私はビックリして目を見開いた。
だって、来ると思わなかったから。

薫「Aちゃん、会いに来たよ」

薫がそこにいた。