【名探偵コナン】自宅にカチコミされるとか聞いてない【ギャグ/赤井秀一】

#505 ページ29

「あ、でも」


　思い出したようにピタリと足を止め、Aは安室に話しかける。


「私の保護云々は置いといても……あの人が保身の為に私を脅して利用してたなんて名目、二度と使わないで下さい。たとえ状況からそう見えたとしても……絶対に」
「……」


　良くも悪くも少女の意見だ。
　例え真実ではなくても、状況から事実だと判断された時点で十分に通る。赤井本人ですらこの名目を盾に突きつければ否定をすることは無いだろう。

　分かりきっている事実なのに、その少女の真剣な瞳に気圧されて、皮肉めいた言葉一つすら返せなかった。

――
　扉に手をかけ、二人は玄関口の照明に照らされる。
　その先の正門では、スーツの男の人達が未だにこちらの様子を伺っていた。安室さんが戻るのを待ち構えてるようにも見える。


「……それじゃ、」
「待ったあっ！」
「っ!?」


　紺色のシャツを咄嗟に引っ張れば、バランスを崩しながらも安室さんがこっちを振り向く。


「ど、どうしました？」
「貴方の本当の名前、まだちゃんと聞いてないです」
「……名前、ですか？」


　当然初対面な訳でもないし、なんなら３足くらい(下手するとそれ以上)のわらじを履きこなしている事も知ってる。本来の職業もコナンくんと秀さんが言い当てた。でも、


「……1回くらいちゃんと名乗ってくれてもいいじゃないですか」
「……ふむ、いいでしょう」


　一度しか言いませんよ、と念を押して安室さん、いや……ゼロさんは吹っ切れたような晴れやかな顔で微笑んだ。


「――公安警察の、降谷零だ」
「……か、神崎Aです。フツーの、そのへんの高校生です！」
「あっはは！嘘つきだなあ、きみ！」
「エ??」

　
　つられて自己紹介しただけなのにこの言われよう、Why？身分詐称は一度もやったことないんですけど??

――
　声を上げて笑ったことで、背後の部下達が狼狽えているのが分かる。

　でも笑わずにはいられなかった。
　だって、初め赤井秀一について聞いてきたのは彼女の方なのに、今や生死の確認どころか、二人で結束して自分を翻弄してきたのだから。

　Aさん、きみは――なんてまっすぐで、嘘つきで、底の見えない少女なんだろう！


「ま、まあとにかく……ポアロのサンドイッチ！今度食べに行きますからね？」
「ええ。お待ちしてます、Aさん」


(にしても零だからゼロ……なんともストレートかつ覚えやすい……)
(ふふ、だから会った時に言ったでしょう？小さいの頃のあだ名だったって)
(まだあとひいて笑ってやがる)

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2023/06/11

気づいたら時間飛んでやがる

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