琴葉奇譚【文／ス／ト×ボ／イ／ス／ロ／イ／ド】 (ページ5)

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四話ページ5

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　人の五月蝿い喋り声と、その中でも一際目立つ怒鳴り声で目が覚めた。身体が妙に怠く、上半身を起こすだけで目眩がする。目と目の間、鼻の骨を挟む様に指で押し、其れを緩和しようとした。
　暫くして目眩が治まると、徐々に周りが見えてくる。そこは全く身に覚えが無い部屋だった。私が寝ていたのは鉄パイプの柵が頭と足の方にある、例えるならば病院の様なベッドだった。右を見ると、部屋を分ける為のしきりが置いてある。そして、反対側に首を回すとパイプ椅子が置いてあった。
　――本当に、病院なんだろうか？
　しかし病院にしては内装が質素な気がしなくもない。それに何故私が病院にいるんだろう？
「よいしょ、と」
　考えても答えが出てくる訳ないよね。
　そう思い床へ降りた。何故か靴下を履いてない足をぺたぺたと鳴らしながら歩いていると、ベッドの脇にブーツを発見した。よく見ると靴下も掛けてある。手をぱちんと鳴らしてそれらに駆け寄り、急いで履いた。

　爪先まできちんと履けているのを確認し、目の前にあるドアノブに手を掛け勢い良く捻った。勢いに釣られた片足が出たまま、いつの間にか瞑っていた目を開ける。
　普通の会社。第一印象はそれだ。しかし、その部屋を見渡す度に普通ではないことがわかる。腕や首から包帯が覗いてる男性の肩を持ち、大声で文句を言っている長髪の男性。それを無いものの様にお弁当を食べている髪飾りを付けた女性と、ラムネを飲んでいる探偵のコスプレをした男の子。それらの方々を遠目に見てるスーツの大人達。
　確か皆で集まったらこんな感じだったっけ、と軽い現実逃避をしていると髪飾りを付けた女性に声を掛けられた。
「あ、起きたんだね。大丈夫かい？」
　当たり前だけれどお弁当を食べる手は止めてもこちらに歩いてくる気は無いようで、早歩きでその女性の元へ。私が返事をする前に、声が飛んできた。
「大丈夫だったかい？」
「はい、ご心配有り難うございます。大丈夫です」
　そりゃあよかったと微笑まれ、思わず笑みを返した。相手が笑むのを止める前に問い掛ける。
「ええと、ここ何処ですか？それと、ボイロの事務所の場所を教えてもらいたいのですが……」
「……ボイロ？」
　そう呟くと女性は眉をひそめ、軽く握った拳を顎に当て考えるような仕草を見せた。

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