Glay.284 ページ34
.
「灰崎くん、灰崎くん」
「あ?何」
ベンチでドリンクを飲んでいるとAが俺の名前を呼んだ。
俺は適当に返事しながらAの言葉に耳を傾ける。
「誠凛との試合どう?」
「……」
どう?ってなんだよ。大雑把な聞き方だな。……と思いつつタオルで汗を拭きながら息を吐く。
「4番のシュートはもう使えねぇ。だから次からテツヤ使ってくる」
「じゃなくて、灰崎くんはどう?楽しい?」
「はぁ?別に楽しいとかねーよ。何もなけりゃこのまま勝てんだろ」
「もう、ダメだよそんなんじゃ」
Aが不満げな顔をする。
そうは言うけれど公式試合でもないしたかが文化祭の催し。
それに誠凛に本気でやれって言われても奪いたいモンもねーしやる気も起きねぇ。
という事を伝えるとAは更にムッとした。
「ま、何にしてもこっから先はちょっと集中するっつの」
「もう……」
Aの頭に手を置くと立ち上がって一度伸びをした。
……しょうがねぇな。そんな顔されちゃあ。
.
第2Q。俺は変わらずテツヤのマークについた。
テツヤを使って速攻仕掛けてくるって所だろ。
まあどうせ見張ってても見失うんだからマークしてるだけ無駄っちゃ無駄だが。
「……っと」
早速飛んできたパスが目の前で回転をかけて弾かれる。
多分5番あたりがシュート体制なのだろう。
「ハー、つくづく敵だと思うと厄介だわ」
けれど俺はマークしていたテツヤから視線を外さなかった。
ああ、今はそのパスが見れりゃあ充分だ。
影の薄いテツヤのプレイはビデオ越しだと余裕で見失う。
ただ人間がマジで消えるわけでもないので目の前で意識をテツヤに留めて瞬きに意識して見続ければ実質消えたりなんてしない。
つっても影の薄さは変わんねーから次にボールに意識を向けた時には消えちまったわけだけど。
「さて……」
またいつの間にかパスが飛んできたボールを持ってドリブルしながら周りを見る5番の目を眺める。
イーグルアイっつーのは並外れた洞察力と視野の広さだろ?
でもそんなモン、所詮は赤司の下位互換なんだよ。
要はテメェ程度めちゃくちゃ集中して目離さなけりゃいいってこった。
とにかく見て、見て、見て、
「もーらい!」
5番が8番にボールを投げた瞬間、一気に間に入ってボールを奪うと望月の「速攻!!」という声が響いた。
その声に一瞬、ほんの一瞬だけ、
皆の意識が望月に背いたのを俺は見逃さなかった。
80人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マリイ - ミリイのリクに虹村とこのままが良いって言う奴いるからミリイが怒ってる そのコメに返信するから余計に怒った ミリイに全て聞かないとダメ (2019年8月24日 14時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:由麻 | 作成日時:2019年8月8日 0時