【黒バス】灰色。【灰崎祥吾】6 (ページ30)

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「使うのは第二体育館で、控え室はこちらです。
ロッカーもあるので着替えはここでお願いしますね」

控え室まで案内して体育館に移動してから
ボール等の用具の場所を教えて
私は一度、壁掛けの時計をみた。

「この体育館ならアップとか自由に使って大丈夫ですけど
まだ試合まで時間もありますし
良かったら文化祭も見ていってくださいね」

一通りの説明はこのくらいかなと思い話を止めると
誠凛さんは一度顔を見合わせてから

「気張っちゃってたけれど、なんだか普通で安心したわ」

と監督の子が言った。
…警戒でもされてたんだろうか。

けれどその警戒も解かれたらしくすぐにワイワイと話し始めていた。

…まあ警戒の理由もつまらなそうに欠伸しながらついてくるだけで
ずっと黙ってる灰崎くんのせいでもあるんだろうけれど。

「監督、少し抜けてもいいですか？」

「え？でも…いえ、そうね。話したい事もあるみたいだし」

そしてそんな会話を最後に他の皆は控え室に
黒子くんは私と灰崎くんの元へ来ると

改めて一度会釈をした。

「何のつもりだ？テツヤ」

「いえ、一つだけ聞きたい事があって」

やっと口を開いた灰崎くんの方が警戒したように黒子くんを見下ろす。
黒子くんは落ち着いた笑みを浮かべたままで「聞きましたよ青峰くんから。技を奪われたって」と。

「灰崎くん、バスケは好きですか？」

「……別に。好き嫌いでやってねぇよ」

「それじゃあ何で…」

「関係ねぇだろ。っつーか別にお前らの技に興味ねぇよ。
今日は普通に試合するつもりだから安心しとけ」

そう言って灰崎くんは不機嫌に体育館を出ていってしまった。
その場に私と黒子くんだけが残される。

「すみません、無粋な事を聞きましたよね」

「ううん。…バスケは好きなんだけど
それを素直に言うの恥ずかしいだけだと思うよ」

「それなら良いんですが…」

「うん。改めて今日はよろしくね」

私も体育館を出ようと踵を返そうとして
ふと言い忘れた事があったのを思い出したので
体育館を出る前に残しておいた。

「そうだ、灰崎くんは普通に試合するって言ってたけど

あんまり取られたそうにしたら
あっさり奪われちゃうから気を付けてね」

体育館から出ていく背に小さく安心したように笑う声と

「わかっています。…また後で」

という声が聞こえた。