Gray.278 ページ28
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「理由なんてねぇよ、何となくだ」
そう言いながらも目は合わせてくれない。
まあ素直な言葉も期待していなかったけれど
「じゃあついでに私達と一緒に回る?」
「達って望月も居んのかよ」
「俺が居て不都合でも?」
「……」
「まあ、ちょうどシフトの時間だったし邪魔者はいなくなるよ。
その代わり、ちゃんと誠凛が来たら控え室案内してよ」
そう言うと先輩は「ごゆっくり」と席を立ち、クラスへ混ざって言った。
視線を戻してタルトを食べてから顔を上げると
灰崎くんを見るとずっとこっちを見ていたのか目が合った。
「な、何?」
「別に。…っつか行きたい所あんの?」
「行きたい所かぁ、ここ来るまでに色々回っちゃったし」
灰崎くんはどこか行きたい所は無いのだろうかと
そう問い掛けようとして、けれどそれを言うより先に手を握られた。
耳元に顔を寄せられ囁かれる。
「俺ももう色々回ったし……文化祭、ちょい抜けね?」
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「っ、は、ぁ…っ」
「…甘ぇ」
何度目かになるキスの後でそう言いながら灰崎くんは親指を舐めた。
あれから何となく流れで部室に移動してからすぐの事。
早かれ遅かれこうなるんだろうとは思っていたけれど。
「タルト、食べたから…」
「あー、そういう事か」
部室に置かれたソファベンチの上で押し倒されて
何度も何度も繰り返される口付けの後で
慣れた手で灰崎くんが私の制服のボタンに手を掛ける。
そこでやっとぼーっとしていた頭が一気に冷えて
脱がせようとする灰崎くんの手を掴んだ。
「え、え!ちょ、やだ…」
「はあ?この流れで拒絶とかナイだろ」
「でも、部室ではやだ…」
恥ずかしさで目を逸らしたまま
ゆっくりと灰崎くんの手を離す。
「その、出来たら…どっちかの部屋とかが良い…な」
私の言葉の語尾はどんどん小さくなっていった。
いやホントに恥ずかしい。
慣れてるんだから察して欲しいのに
言わなきゃ分からないんだからもう。恥ずい。
灰崎くんは一度深くため息をついてから
「わーったよ、じゃあ触るだけ」
せめて、とそう提案した。
「…そ、それなら」
「っしゃ」
ニヤリと厭らしい笑みを浮かべながらに
改めて私の制服のボタンに手を掛けた。
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マリイ - ミリイのリクに虹村とこのままが良いって言う奴いるからミリイが怒ってる そのコメに返信するから余計に怒った ミリイに全て聞かないとダメ (2019年8月24日 14時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:由麻 | 作成日時:2019年8月8日 0時