【黒バス】灰色。【灰崎祥吾】6 (ページ2)

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「シャツ、洗って返すね」

着替え終えて洗面所を出ると、灰崎くんとすれ違った。
曰く「トイレ」らしい彼にそう言って先に部屋に戻ると

まるでそこだけ光っているかのように棚に置かれた香水の瓶が目に入った。

「これって…」

いつも付けているやつだろうなと手に取ると一度だけ首元に掛けてみる。

抱き締められているかのように、包み込む嗅ぎなれた匂い。

大好きな匂い。灰崎くんの匂い。

どこのメーカーなんだろうと瓶を見るとそれが見覚えのあるものだと気付く。

「…お母さんが使ってたやつと同じだ」

たまに感じた懐かしさはそういう事だったのか。
変な偶然もあるものなんだなぁ。

と、思った一瞬後のこと。

そういえば、と思い出したのは一度香水をあげた子がいた。

そう

″しょうちゃん″に香水をあげた事が…。

″小学校の時に貰った。…のを気に入ってずっと使ってるだけ″

「…あ、…え…?」

あ、れ、いや、違う。だって。

しょうちゃんは、女の子で、赤いランドセルだった、から。

「…何してんだお前」

「えっ!?…あ、ううん」

香水を元の場所に置いて、私は灰崎くんから目線を逸らすと帰り支度を始めた。

自分の物と、灰崎くんのシャツをしまって

そして髪を結ぶと猫の髪飾りを着けた。

「…帰んの?」

「う、ん、シャワー浴びたいし…」

「シャワー浴びたら香水落ちそうだな」

「な…っ」

どうやら見られていたらしい。
意地の悪い笑みを浮かべるこの人があの″しょうちゃん″だなんて思いたくない。

偶然だ、偶然。しょうちゃん女の子だし。

「くく、…あー、そういや、夏休み明けたら教室の方にも顔出すわ」

「え?…ホント?」

意地の悪い笑みを浮かべていたかと思えば今度は何時もの表情に戻ってそんな素っ頓狂な事を言う。

ほぼサボっていて…良くて学校に来ても教室なんて来なかったのにどうしたのだろう。

そう問い掛けると「出席日数足んねーと補習。そしたらWC出れなくなる」…らしい。しかも監督から直々に言われたらしい。

「そっか、でも、理由はどうあれ学校で一緒に過ごせるんだね。嬉しい。」

物好き、とか言われたけれど嬉しいのは本当の気持ちで。

新学期の楽しみが増えた事に気持ちを馳せながら帰り支度を済ませて

それからすぐに、寮に帰宅した。