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Grdy.189 ページ39

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「へえ。…ま、今は良いぜ?それで」



そう言って満足そうに彼は体育館に戻っていった。

その少し後ろをついて行きながら、その背中を眺める。
まだ、開いたばかりの才能。それがいつか満開に狂い咲くのが楽しみで仕方なかった。


うん、虹村先輩が居なければきっと、私は彼に惚れている。
けれど虹村先輩が居なかったら、今の私は福田総合には居ない。

灰崎くんを知る事だって出来なかった。

知ろうとも思わなかっただろう。



だから、いや、…だからこそ。



「…私のヒーローは、虹村先輩だけだから、ごめんね」



私が彼を選ぶ事は無いだろう。





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遠征7日目、つまり最終日に陽泉高校との練習試合を予定している。
その前日まで両チーム共に汗水流しながら練習の日々を重ねていった。

…と言いたいところだけれど


六日目である本日は両チーム共に午前練だけだった。


体力温存とか陽泉と交流を深める為とかの名目だけれどその実はただの自由時間だ。



「皆、考える事は意外と同じだね」



といいつつ実質自由時間なので福田総合の面々は殆ど海に足を運んでいて
そこに陽泉の面々が殆どいないのだから交流もクソもない。



「シレッと水着持ってきてるマネージャーに言われたくねぇだろうがな」


「先に海を満喫した人に言われたくない」


「あ?」



海行かね?なんて誘いは灰崎くんからだった。
断る理由も無く了承したけれど、

そんな誘いがなくとも私は海に行っていただろう。


だって夏だもの。海で遊びたい。



「っつーか、何でパーカーとか着てんだよ」


「誰かさんが絶対に変な目で見るから」


「見るだろ。なんなら虹村だって見るわ」


「それを開き直るか開き直らないかの差って大きいよ?」



少しだけ不機嫌な灰崎くんを見つつも
まあ、泳ぐ時にはどっちにしても脱ぐけど、と胸中で考える。

絶対に口には出さないけれど。



「チッ、つまんね」


「え、ひどーい」



なんて笑いながら言うと、声と共に肩に手を置かれた。



「じゃ、そんな酷い彼氏より俺と遊ぶ?」



声の主を一瞬で理解して、振り向く。
楽しそうに「なんてね」と言ったその人物はもっちー先輩だった。



「お前も水着持ってきてん…。…うげ」



灰崎くんの声に彼の目線を追うと先輩を追う人物が一人。



「タツヤも一緒?」



問いかけると彼はフッと微笑み答えてくれた。



「キャプテン同士での交流をね」


「へー」



ちゃんと名目を果たす人が居るんだなぁ。

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作者名:由麻 | 作成日時:2019年3月26日 23時

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