Gray.186 ページ36
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ー灰崎side
やけに仲が良いとは思っていた。
アイツらに個人的な理由があるから、らしい。
コートに戻る氷室を眺めるAは先程言われていた電話を楽しみにしている表情だった。
嫉妬とか、そういうのじゃなくて。
モヤモヤとしているのは。
「灰崎くん、調子どう?紫原くんの技は奪えそう?」
「っ」
いつの間に隣まで来ていたのか、さっきまで氷室を見ていたはずのAは今度は俺を見つめていた。
紫原、どころか俺は氷室ばかり気にしていた。
俺が今、気にしなきゃいけない相手は違うだろ。
「…さあな。…ま、試合、楽しみにしてろよ」
「えー、じゃあ、期待してるね!」
「ん」
そして俺から離れたAは仕事を再開し始めた。
「…」
Aが俺の傍を移動したと同時だった。
誰かの目線を感じた。
そしてその目線の正体を俺は何故か直ぐにわかってしまった。
すぐに向こうのコートの氷室を見ると案の定、俺を見ている。
表情から感情は読み取れない。距離があるというのもあるが
直ぐに目線を逸らされてしまったからだ。
「…何だ、アイツ」
また一瞬、氷室に意識を持っていかれそうになってハッとする。
…氷室とAの事を気にするのはやめよう。
気を紛らわせるために少し早めに休憩を辞めると俺は練習に戻る事にした。
.
「よっ、と」
ボールを持ったまま、ジャンプ。
そのまま回転してダンクを決める。
何となく、見よう見まねで紫原のトールハンマーの動きをやってみる。
「…何か…よ、弱い?」
最初に口を開いたのはAだった。
「超大型竜巻と中型竜巻くらいの差?」
「あ、それです。」
それから望月も口を開き、Aがその例えに納得する。
頼んでねぇのに二人に口出しされた。
いや、とは言え確かに俺も思っていた。
けれどもう圧とかどうしようもなくね?
身長とか体重とか違うわけだし。
…あれ、じゃあ、リョータはどうやったんだ?
高さ?…確かにあの時のリョータは高かった。
けれど高さ、だけじゃない気がする。
「あーーわかんね。」
どうせ隣のコートで練習してんなら都合よくトールハンマーとかしてくんねぇかなと思うけれど
敵に塩を送るような事をする程、アツシもアホではないわけで。
「じゃあまず、レベル下げてみたら?」
そう言ったのは望月で、顎で差すのは向こうのコート。
アツシでも氷室でも無い。
「劉偉、だっけか」
レベル下げ。…悪くはねぇか。
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作者名：由麻 | 作成日時：2019年3月26日 23時
