Gray.180 ページ30
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「初日からフルでサボりとは良い身分だなアイツは。」
不機嫌にもっちー先輩が呟いたのは練習が終わった後だった。
外はもう薄暗くて、シャワーを浴びたらこれからご飯だと言うのに
まだ灰崎くんは戻ってくる気配が無かった。
「探しに行きましょうか?」
「いや、暗くなるし危ないからいい。
飯はともかく流石に就寝まで戻らない事は無いだろうからな
様子を見つつ俺が連絡してみる」
「分かりました」
先輩が出て行ったのを最後に、ひとりぼっちになった体育館で私は整備や片付けをして
やっと終わって体育館を出ると、
街灯と家の明かりの更に奥に大きな水溜りのように、海が見えた。
「…宿までの通り道、かな」
ちょっとだけ寄ってみたいなと思い、宿に少しだけ遠回りして帰る感覚で海の方へと歩き出した。
徒歩十分、いや、十五分くらいだろうか。
目で見るより意外と近くに海はあった。
「へー、まだ人も居るんだ」
砂浜に通じる階段を降り、周りを見渡す。
そこで、初めて特徴的すぎる髪型を見つけた。
「あ、灰崎くんだ」と思い近づこうとしたが、灰崎くんと彼を囲む二人の女の人の雰囲気がとても楽しそうで
その輪に入っていく勇気が出なかった。
いつもなら「部活サボってまた遊んでたの?」なんて軽口を叩けたはずなのに
女の人が二人というのを除けば
そして服装が水着だったなら尚「お似合い」だと思えてしまって。
…女の人はどちらも大人っぽくて、それがお似合いということは
「…灰崎くんって、意外と大人っぽいんだ」
彼は…大人の遊びを覚えて大人ぶってる…大人ぶってる、子供。…ずっとそんな印象だった。
けれど思っていたよりずっと、彼は私よりも大人なのだろう。
急に、隣に居る事が恥ずかしく思えてしまった。
彼を支えるのに私は釣り合わないと思ってしまった。
灰崎くんの両隣を占領する同い年くらいに見えるのにその雰囲気がとても綺麗で大人っぽい女の人達に
私は酷く、…醜くも嫉妬してしまった。
そして
「…っ」
女の子に挟まれて楽しそうに口角をあげる灰崎くんにイライラしてしまった。
…灰崎くんは、灰崎くんだ。
中学の時から何も変わらない。
当たり前のように喧嘩もするし女遊びもする。
それが彼にとっての当たり前だと分かっているのに
灰崎くんが私以外の女の子と仲良くしてるのが
「…嫌だ、なんて。」
言えない。
そして、私は階段を上り宿までの道を、…走った。
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作者名：由麻 | 作成日時：2019年3月26日 23時
