Gray.152 ページ2
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ー青峰side
第三Q、灰崎は俺のマークを外れた。
第二Qで一気に逆転された事に少し懲りているのかと思っていたけれど
それが違ったと言うのは俺がシュートを決めて灰崎がまた俺のマークに戻ってきた時に気付いた。
俺は、見られていた訳か。
「なぁ、ダイキ、前はマグレとか言ってくれてたよなァ」
「…」
ボールは必然的に灰崎の手元にあり、ゆっくりドリブルを続けていた。
いつでも取れる速さ。けれどそんな隙は微塵もなかった。
会話なんてほとんど耳に入って来ない。
「もう言わせねェよ。…俺のモンだ」
"暫く練習をサボつていた"
"ある時期から気まぐれにも練習をするようになった"
その条件は恐らく一緒で、なんなら俺の方がまだ練習してるってのに。
「…んで、追いつけねェんだよ…!!」
緩やかなドリブルが一気に加速した。
桐皇のゴールの方に走る灰崎を追う形になるまではよかった。
例えばお互いの速さが縮まずとも同じ速さなら、それならまだ理解出来る。
が、コイツの怖い所は模倣じゃなく強奪って所だ。
模倣なら技術もスピードも限りなく真似っ子。
だが強奪は…真似した上でソイツのやりやすい技術、スピードでアレンジを入れて…それはもう真似ではなく本当に奪ってくる。
───知らなかった。
スピードに関してだけ言えば俺より灰崎の方が勝っているなんて。
ゴール外も内も俺が灰崎に追いつけていない事に動揺しているのが嫌でもわかった。
…ここで、ゴールを決めたらマジで奪われる。
「オイ、止めろ!!」
だからゴール近くに居た若松に叫んだ。
唖然と俺を見ていた若松がハッとしたように灰崎を止めようと灰崎の前に立ち塞がった、
…正確には立ち塞いだのだが、その直後に灰崎は後ろに仰け反るように飛び、ボールをゴールに投げ込んだ。
それは、もはや俺ではなかった。
これが模倣とは違う、強奪。
───ゾクリと鳥肌が立った。
この感覚は、二回目だ。
これは、そう、──奪われる感覚。
奪われたら、そんな事はありえないと信じたいのに
もう俺のシュートは入らないし、
俺は灰崎には、追い付けない。
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作者名：由麻 | 作成日時：2019年3月26日 23時
