Gray.99 ページ49
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開いた紙は虹村先輩のと同じ長方形で、そこには吉と書かれていた。
…吉ってどの辺?末吉より下?大吉の前?え、よく分からない。
初めてのおみくじがコレってなんて微妙なのだろう。
「なんっか、二人して良いのか悪いのか微妙だな。」
「確かに…。…恋愛、新しい出会い有り、って書いてます」
「あってたまるか。」
「あははっ」
「こっちのおみくじもハズレだハズレ」と言いながら虹村先輩はくしゃくしゃと頭を撫でて来た。
こういう時の表情は決まって不機嫌にアヒル口になっている。
「そんなに唇突き出してたらまたキスしますよ」と更にからかってみると先輩の顔は真っ赤に染まった。
「くだらねぇ事言ってないで屋台でなんか買うぞ!俺は腹が減ってんだ!」
「お蕎麦食べたのに?」
「食べ盛りなんだよ!!」
そう言いながら虹村先輩は強引に私の手を掴んで屋台の方へと歩き出した。
屋台ではそれぞれ食べ物を買ってそして神社から少し離れた公園で食べる事にした。
先輩の食べ盛りは案外嘘でもないみたいで、お蕎麦を食べたばかりなのに焼きそばを頬張っていた。
頬張ってちょこっとだけ頬を膨らませている様子が可愛くて、その食べ方はとても美味しそうだった。
人形焼きを食べる私の手が止まり、ぐぅ、と小さくお腹がなった。
「ぅっ…」
「…腹減ってんなら買えば良かったのに」
「いや、さっきはお腹すいてなくて虹村先輩が美味しそうに食べるから…ってか人の食べてる物って美味しそうに見えるんですよ」
虹村先輩にもお腹の音は聞かれていたらしくその恥ずかしさから少し饒舌になりながら私はじーっと虹村先輩の焼きそばを見つめた。
「あー、分かった。やるよやる。
そんな見られてちゃ食えん」
「やったぁ!先輩大好き!」
「うわ焼きそばの代償に言われても嬉しくねぇ」
その言葉に差し出された焼きそばを受け取りながら
私はもう一度、同じ言葉を言った。
「虹村先輩、大好きです」
そしてその突き出された唇にキスをした。
「〜っのさぁ、そう言うのざけんなよマジで」
「顔真っ赤にして言われても威勢ないですねぇ」
「うっっざ」
顔を真っ赤にした先輩は罵声を吐きながら横から私に抱きついた。
そして、肩に顔を埋められる。
焼きそば味のキスも悪くは無いけれど
これってやる側もめっちゃ恥ずかしいので
「…顔上げられないですね」
しばらく顔上げないでくださいね。…顔が熱いの貴方だけじゃないんで。
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作者名:由麻 | 作成日時:2018年12月14日 6時