Gray.97 ページ47
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まさか、聞き入れて貰えるとは思わなかった。
お蕎麦を食べ終わると虹村先輩は家族の人達に「Aと初詣行ってくる」とか本当に言い出しちゃって
しかも許可得られちゃったから余計に焦っている。
私が言い出しておいてなんだけれど、本当に良いのだろうか。
「先輩、あの、今すぐじゃなくても…」
「俺が行きたくなった。だから行くぞ」
虹村先輩が一度やると決めたら絶対止めないのを私は知っている。
私は諦めて「…わかりました」と返事をすると一度、寝室部屋へと戻って部屋着から私服へと着替えた。
リビングに戻ると私よりも先輩の方が着替え終えるのが早くて
私の姿を見るなり先輩は「行くぞ」と言ってリビングを出た。
出る前には「いってきます」と言っていたので私も少しだけ迷ったけれど同じ言葉を言った。
「い、いってきます…!」
まるで自分の家のように皆は「いってらっしゃい」と言ってくれた。
玄関で靴を履いて先輩の家を出ると、思っていた以上の寒さが襲い掛かる。
「さっむ!!」
そう言ったのは虹村先輩で昨日ぶりにマフラーに口元を埋めているのを見た。
そして同時に思い出して、私は虹村先輩の腕にくっ付く。
やっぱり、くっ付くと暖かい。
「暖かいですか?」
共感してくれると思っていた。
けれど共感の言葉より先に少しだけトーンの低い声が夜空に響く。
「…俺さ」
空を見上げてマフラーから出た口元はアヒル口になっていた。
少し細められた灰色の瞳に月明かりが反射して淡く黄色く光り、まるで宇宙のように綺麗で見惚れる。
返事を返さずとも先輩は言葉を続けた。
「お前が灰崎に手出されてるんじゃないかって不安になってた」
「…はぁ?」
予想だにしない言葉に素っ頓狂な声が漏れる。
瞳に向けられていた意識が戻され先輩の顔を見るとそれは冗談ではなく本気で思っている表情だった。
少しだけ、細めた瞳が睨んでいるようにも見える。
が、すぐにその表情は普段通りに戻った。
「ま、杞憂だったか。タイプじゃねーよな」
「じゃないですね。特に見境無く手出すのはちょっと。先輩みたいに一途が良いです」
私の本音に虹村先輩はニヤリと笑った。
「一途かは分かんねーぞ?アメリカって綺麗な金髪ねーちゃんだらけだし」
「最ッ低」
一発肩パンしてやろうかと思ったけれどその前に体が離れそして、
「ま、どうやら俺は年下派みたいなんで」
手を繋がれて、私の力は完全に抜けてしまった。
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作者名：由麻 | 作成日時：2018年12月14日 6時
