【黒バス】灰色。【灰崎祥吾】2 (ページ25)

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Gray.75 ページ25

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────東京に着いたというバス内放送で目が覚めた。

そこは確かに東京の駅で帝光中の最寄りの駅なので懐かしさがある。
家は駅の反対方面だけれど登下校や合宿や遠征やそれから…。

……デートとかで駅を通っていたから土地勘はあった。

バスを降りてスマホで時刻を確認すると九時を過ぎていた。
三時間以上経っている。

そして、スマホには連絡が一件だけ来ていて
虹村先輩からの『寝てたわ。空港着いたから今から向かう』という返信だった。

寝てたの一緒だ、とか一瞬思ったけれど
そりゃあアメリカから日本まで軽く十時間はかかる。
夜中の便で来てくれたのだろう。

……そうだ、三時間経ったからといってすぐに会える訳じゃない。
待ち合わせの場所に向かわなければ。

待ち合わせの場所────帝光中に。

虹村さんからの返信は八時頃で空港から駅に来る時間等を考えても待たせているかも知れない。
私は『今、駅に着いたので帝光中に向かいます』と送るとスマホをしまって変わりに交通系カードマネーを出すとピッと言う音と共に改札を出た。

ここから帝光中までは歩いて十五分も掛からない。

「…あともうちょっと」

早く。…早く虹村先輩に会いたくて、私は早歩きで向かった。

本来ならば街並みを懐かしんだりする所なのだろうけれどそんな余裕は私の中には無かった。

虹村先輩に会ったらまず何を話そう。
WCの事かな。灰崎くんの事?
それとも先に時計を渡してしまおうかな。

そんな事を考える私の脚は早足に変わり、目的地に近づくにつれて小走りに変わった。

ドキドキと心臓が高鳴っているのは走っているからだろうか。
心臓が口から飛び出そうで、息を吐く度に目の前が真っ白になる。

涙で視界が歪んで一瞬立ち止まってしまったけれど、涙を拭うとまた走り出す。

会いたい。会いたい、会いたい!

それ以外考えられなくなっていて、横断歩道の赤信号すら煩わしい。

車が止まって、青になった瞬間に走り出す。
そしてすぐの道を曲がると、帝光中が見えた。

そこで私は足を止めた。ゆっくり歩き出す。

裏門に虹村先輩は居なかった。

学校の周りを外周するように歩いて曲がる。
また、同じように外周するよう歩いて、曲がると

やっと正門が見えた。

そこに、人が立っているのが見えた瞬間

───私は、一目散に走り出した。