Gray.70 ページ20
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あの後、落ち着いた友達を家に送って
私も家に帰ると、家族に言った。
帝光中学校に行きたい、と。
帝光中はお坊ちゃま校と言われていた。
学費も馬鹿にならないし私立だから普通の何倍も勉強だってしなきゃいけない。
でも、行きたい。
彼と同じ学校に。
不純な動機でも私の決心は決まっていたから
両親を説得して必死に勉強して
そして、私は無事、受験を突破して帝光中へと入学した。
帝光中の制服を身に纏って、スクールバッグを持ち
約一年ぶりに私は帝光中の門を抜けた。
やっと会えるんだと思うと入学式やホームルームなんて頭に入って来ない。
放課後になると私は真っ先に先輩の教室へ行った。
二年か、三年かも分からない。
だから適当に一つ一つ回っていった。
部活勧誘の人たちを押しのけて、一目散に。
入学早々に二、三年の教室前の廊下を走るなんて
こんな一年、目をつけられるかもしれない。
でも、そんな事より、彼に会いたかった。
そんな思いで教室を一通り回った後に聞き込んで見ると、一人の先輩が言った。
「虹村ならバスケ部じゃないか?」と。
私はお礼を言うと今度は体育館に向かう。
バスケ部の強いこの学校は体育館は一つだけではなくて、それに驚きながら一つずつ体育館を回る。
部活中なのかそれぞれ人がいたけれど、虹村さんの姿は見えなかった。
最後の一つの体育館を覗く。
ここだけ人が多かった。
よく見ると入部テストだと伺えた。
そして私は、驚愕した。
───驚愕して、携帯のカメラフォルダを開く。
整列する人たちの目の前に
先生と、先輩であろう生徒。
その、先輩の中には彼が、虹村さんが
─────恐らく、虹村さんが、居た。
恐らく、と言ったのは目の前の人物は、カメラフォルダの人物と違ったからだ。
先輩としての威厳、先輩としての怖さこそはあるのだけれどあのピリピリとした雰囲気は無くなっていた。
そして何より変わっていたのが、
…あの金髪の髪が、黒く染められていた。
数ヶ月の間、人はこんなにも変わるのか。
なんだか、丸くなってしまった。
もう、帰ろう。
少しだけガッカリしてそう思ったけれど
私は離れることが出来なかった。
先輩と一年で始まったミニゲームに目を奪われてしまった。
「はや…」
一年生も追いつくのが精一杯で三年生は凄かった。
その中でも特に、虹村さんは。
「…かっこいい」
ミニゲームが終わるまで、見惚れてしまった。
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作者名:由麻 | 作成日時:2018年12月14日 6時