Gray.67 ページ17
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小学生にとって中学生と言う存在が既に大人に見えるのに
中学生とは思えないあまりの迫力に何も言えずに居ると
虹村さんは痺れを切らしたのか一度舌打ちをすると
明らかに私を睨みながら喧嘩腰な喋り方で言った。
「なんだテメェ。俺になんか用かよ、あ?」
「え、あ、その…っ」
声が震えていた。私はそれでもゆっくりと事情を話した。
私の話を聞くと虹村先輩の表情は恐ろしい程の怒りを含んでいた。
表情だけではなくそれは声にも出ていた。
「チッ!おい、テメェ!ボサッとしてねぇでさっさと案内しろ!!」
「は、はいぃ!」
友達を助けたいとか以前に、ただただ彼が怖くて、私は怯えながら指定された公園に案内した。
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指定された公園には公衆トイレがあった。
そこの男子トイレに居ると彼らは言った。
「えっと…男子トイレに居るって言ってた!」
私は友達が心配で走り出そうとした。
けれど、虹村さんに腕を掴まれて動きが止まる。
「アホか!!考え無しに突っ込んでどうすんだ!!」
「ひっ!ご、ごめんなさい!」
「見ろ」
「…?」
虹村先輩が指を指したのはトイレの横に備え付けられた水道。
近くにはホースもある。
「お前、あのホースを水道に繋いで隠れてろ。
んで、俺が合図だしたら女子トイレに向けて水出せ。
蛇口、一番最後まで捻ってな」
「え?…女子トイレ?」
「お友達、助けたきゃ言う事聞いとけ。
…チッ。アイツらも人質なんて狡い真似しねーで
俺に直接喧嘩売りに来いっつの。」
「…あの、虹村さんは、皆に恨まれて、悪い人なの?」
私の言葉に、虹村さんは驚いた表情をすると
次に穏やかな笑みを浮かべながら言った。
「ああ、どうしようもねぇ、悪い人だよ。」
「…」
そう言って彼は「行ってくる」と言うと私の頭に手を乗せて、男子トイレに入っていった。
ホースの準備をしながら先程の穏やかな笑みを思い返す。
……悪い人の表情には、見えなかった。
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作者名:由麻 | 作成日時:2018年12月14日 6時