【2BRO.】妄想短編詰め合わせ

近距離恋愛(anijya) ページ18

.



一通り実況を撮り終えて時計を見れば、2つの針は両方ともすでに真上を指していて、随分集中してしまったなとため息をひとつ。背伸びをして、指を慣らして、ついでに首もぐるりとひと回し。


「…Aはもう寝たかな」


寝てるか、流石に。
一緒に住んでいるはずなのにすれ違っているような毎日。寂しくないか、と言われれば嘘になる。なんなら毎日だって一緒に寝たいし抱きたい。覚えたての学生かよ、と言われても仕方ないくらいに。
A、明日もはえーのかな。
たまには俺も早起きして、出社する彼女を送り出そうかとも考えたが、なかなか俺の寝起きもよろしくなく。思っただけで終わっている。
LINEだって最近はもっぱら業務連絡ばかり、好きの一言だって、最後に送ったのはいつだったか。


俺が仕事をしていれば部屋に入ってくるようなことは絶対にしない、良く言えば理解のある彼女。悪く言えば、我慢させている…ってかこれ結構ヤバいんじゃない？俺が女ならきっと速攻で愛想つかしてるね。
Aがいいって言ったって本心かどうかなんか誰にも分からない、そう思うと恐怖だ、Aが居なくなるとか、そんな事考えた事もなかった。


「…らしくねー」


らしくない、本当にらしくないけど。
いてもたってもいられず、寝顔だけでも見ようかと部屋を出た。真っ暗かと思っていたリビングには明かりがついていて、テーブルに目をやれば、肘をついて雑誌をめくる彼女の後ろ姿があった。音で気づいたのか俺の方に振り返り、首を傾げる。


「どうしたの？実況終わった？」
「A…」


何か飲む？と立ち上がる彼女の腕をとっさに掴んで抱き寄せる。
ちょ、どうしたのー？とくすくす笑う彼女にたまらなくなって、好きだ愛してる、とLINEですら言わない癖に今日は口から零れて止まらない。Aが足らない、足らなくてやべーなんて続ければ、俺の腰にも手が回って来て、彼女は少し頬を赤らめながら言った。


「私も、兄者が足らないって言ったら…満たしてくれる？」
「……煽りすぎだろ」


ああ、だめだ。
今日は止められそうもない。




近距離恋愛
(まじ愛想つかされるんじゃねーかとか考えてた)
(なにそれ、そんな訳ないのに)
(…明日仕事？)(休み)
(まーじか)




.
しばらく更新お休みしてました。
これは難産だったなあ。
気づけば3000hit間近、ありがとうございます。

お見通し(otsuichi)→←好きです(otsuichi)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す