八話 ページ10
「水瀬、さっきから携帯なってるよ?」
カフェに入ってかれこれ1時間近く、結構食べた気がするのに時間はそこまで進んでないなと思いつつ、先ほどからバックに入れていたスマホが鳴り続いていた。
ちっ、マナーモードにしてたのに
バックの入り口に置いていたから向かいの席の小夜にもスマホが見えていたらしい。
誰からかかってきているのかわかってる。おおかた今朝の機嫌取りだ。
「彼氏から?」
「はぁ、朝からしつこいんだよね」
「もしかして朝元気なかったのって、、」
「こいつが原因」
「理由は聞いてもいいやつ?」
「べつに大したことじゃないよ。あいつが昨日の夜次の日暇だからいきなり泊まりに来て、今日早く起きて準備するあたしを引き留めて構ってもらおうとしてくるから、一発お見舞いしただけ」
「ふふ、水瀬のこと大好きなんだね」
あたしが男に手を出したことにはスルーして、今の会話によくそんなのほほんとした回答が返せるな。
好かれているのは悪い気分にはならないけど、今日は小夜と約束してるって言ってるのに、引き留めるってさすがに引くわ。
ぎゃんぎゃん吠えやがって、巷じゃ”狂犬”なんて言われてるだか知らないけど、あれただの子犬だろ。
「水瀬の彼氏にいつか会ってみたいな。水瀬の選んだ人だからきっと素敵な人なんだろうな」
「少年院に入ってたんだよ!?素敵も何もあるかよ」
「りゅうちゃんも少年院入ってたよ」
そーいやそうだったわ
あの灰谷兄弟の弟を素敵って言える小夜ってだいぶぶっとんでるよな。
故意的な人殺しだし、10代で六本木仕切ってるってなんだよ。いかれてんだろ。
小夜のことだし間違いはみんな犯すしりゅうちゃんは強いからみんな憧れてついていくんだよきっとって言いそう。
小夜、あいつら人殺したことおそらくというか絶対反省してないぞ。
憧れてる?恐怖政治だろ。
でもたしかに雰囲気も独特でしゃれてて喧嘩も強いし、あいつらのカリスマ性に魅せられてる人もいるんだろうなとは思う。
そこはあいつと違うな。うん。圧倒的に。暴走族やってた頃なんて下っ端には怯えと畏怖しかなかったし。
そんなあいつとなんだかんだ何年も一緒にいるあたしも普通じゃないかもね。
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作者名:sss | 作成日時:2022年7月19日 11時