第4章 エピソード9 ページ10
*****
ビアンカを救いたいって気持ちは本当みたい。
…私、昨日まで震えが止まらなかったのに、今は震えが止まってる。
「…ビアンカを救えば、リゼ…君が元気になるかと思って提案したんだ。もちろん、ビアンカを救いたい気持ちも本当だが…その。」
「…わかりました。ビアンカを救うことは、私もこの3年半ずっと考えてきたことです。ウィンドル王子殿下、次は闘技大会の訓練なのでこれにて失礼致します。」
「ああ。」
……私が元気になると思って提案した？
嘘をついてるとも思えなかった。
けど、そこまで私に話しかける理由はなに？
やっぱり、仲直りしたいからなの？
分からないけど、今はそんなこと考えちゃダメ。
私は闘技大会の専用の服に着替え、闘技場へ向かう。
ヴァン先生とマリク教官を中心に、この訓練や実技試験を行う。
「そういえば、昨日の実技試験を受けていない…リディアリゼ・ルア・ルアールだったか。今日その実技試験を行うがよろしいな？」
「はい。」
私は昨日早退していたから、一人だけで試験を行うのね。
SSクラスの人に見られるのは、これで初めて。
『何あの技。ちっぽけね。』
『しょうがないわよ。何せ、Cクラスの子なんだもの。』
闘技大会…本校の中で、魔力量が一番少ないクラスがCクラスだった。
笑われたっていい。
私がSSクラスにいるのは、前世の記憶のおかげだけではないってところを見せなきゃ。
『選ばれし子よ、そなたは不幸であるからこそ価値があることを忘れるな』
…！この声は何？
体の底から溢れ出る邪悪な光に包み込まれた。
なんなの…この光！
うっ…身体が痛い、苦しい、締め付けられるような感覚だ。
「い、いやっ！」
「リゼ！」
身体が言うことを聞かない…！
これじゃあ、また…あの時みたいに！
捨てないで、お願い…！
「リゼ！」
ウィンドル王子が私を抱きしめる。
…だ、だめ！
「うわあああああ！！」
「リチャード！ダメ！！今すぐ離れて！」
お願い…！私はあなたを巻き込ませたくない！
あなたが幸せであることを望んでいたから…！
「リチャード…！」
邪悪な光はリチャードも巻き込んでしまった。
ごめんなさい…。
あなたを怖がり、疑い…そして傷つけてしまって。
「リチャード…ごめん、ね…。」
そう一言残して私の意識は失った。
『私の最後のお願い、神ルアールよ叶えなさい！私の願いは、リゼが幸せになること！お願い、叶えて！』
……この声、ビアンカだ。
私に願いを使う時…？でも、なんで今頃になって…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：有栖茶 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年1月15日 11時
