第4章 エピソード7 ページ8
*****
「そんなもん誰が信じるか！この子はわしが大切に育ててきた娘だ。それが本当だとしても、わしは…信じとうない…。」
影の女神に選ばれし子…。
いきなりすぎて、私も何を信じたらいいか分からない。
けれど、記憶の子である二人、その調査に協力したフィー様が嘘をつくようにも思えない。
「…お父様、顔色が優れませんよ。今日はもうお休み下さい。私なら大丈夫ですので。」
「だが…。」
私はお父様に優しく微笑んだ。
…私が体調が優れてると言ったら嘘になる。
けれど、ここ数日無理をしていたお父様は、もっとお休みになった方がいい。
「すまぬ…。わしはもう自室に戻る。大神官ティアラに、記憶の子…ルベルク姉弟よ。今日はすまなかった…。リディアリゼに…リゼに詳しいことを聞かせるのは今度にしてやってはくれないか？この子は今日、色々なことが起こりすぎて困惑するだろうからな。」
「了解致しました。皇帝陛下も、どうか無理をなさらないでください。こちらこそ、本当に申し訳ございません。」
「リゼとウィンディーネ子爵令嬢も、もう戻りなさい。令嬢、今日はリゼを連れてきてご苦労だったな。ありがとう。」
「いえ、とんでもございません。こちらこそ、何もできずすみませんでした。」
リリィはそう言って深々とお辞儀をする。
お父様は『大丈夫だ』と一言残し、お父様の自室に戻っていった。
私は歌人宮に戻り、今日の出来事を思い出していた。
…再会、影の女神に選ばれし子、そして…。
「…私、明日学院に行けるかな。」
ビアンカがいたら、少しは違っていたのだろうか。
……ビアンカ、私はあなたのおかげで生きてこられて、ここまでやってこられたの。
けれど…あなたがいなきゃ意味がなかったの。
「世界樹に光が放ち始めた…か。」
…ビアンカも、その光に包まれて眠りから覚めることは出来ないのかな。
お父様も大事だけれど、ビアンカも大事だ。
本当は今すぐにでも助けてあげたいのに…。
「リチャード。」
「…！父上ですか。どうされました？」
「先程、ルア皇女が倒れたそうじゃないか。」
「…！！」
…父上にも既に知らされていたのか。
父上は、リゼの性格を気に入っていた。
けれど、あんな事になってその気持ちは憎しみへ変わっていった。
今は僕と同じで、いつも後悔をしていたんだ。
…お怒りだろうな。
「ウォントン公爵令嬢とは、本当にもう区切りを付けたんだよな？」
「それはもちろんです。」
「…なら、皇女と婚約するとなってもいいか？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：有栖茶 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年1月15日 11時
