第7章 エピソード7 ページ41
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「そうか…。王子と婚約する気になったか。」
「お父様…本当にごめんなさい。私が倒れたばかりに、こんなことになって…。」
「…いいんだ、お前さんが幸せになるなら。ウィンドル王子、娘は任せたぞ。」
「はい、陛下。リゼの事はお任せください。」
そう言ってリチャードは私の手を強く握った。
(…リチャード。)
人を愛すのはやめた。
裏切られるのが怖いのだと必死に言い聞かせた。
けど、この気持ちはなんなの？
こんな気持ちになってはダメだ。
祈願の歌人についても聞かなきゃダメなのに。
「あの、お父様…。祈願の歌人についてお聞きしたいので…っ！今の音は何！？湖の方だけど…。」
ドクンッ
”皇宮の湖”…？
待って…これは感じたことのある悪寒…。
確かこれは…神に選ばれし子が”出現”する時だった。
「まさか…。」
「リゼ、陛下！湖から見知らぬ少年が…。」
リチャードが窓からその様子を見ていた。
(っ…！！これは、芽依の時と一緒じゃない！)
「陛下と殿下はここでお待ちください。ここは僕が見てきます。」
「ああ、任せた。」
そう言って急いで部屋を抜け出したリチャード。
私はドクンドクンと、胸が変に高鳴っているのを必死に抑えるように深呼吸をした。
その様子にお父様も察したようだった。
「…どうして今になって、神に選ばれし子が…。」
「お父様も気づかれましたか…。恐らく…リチャードが言っていた少年は神に選ばれし子でしょう。ですが、神に選ばれし子は歴史上少女にしかなってないはず…。なのに、どうして少年が…？」
「現れ方は正しく神に選ばれし子だ。主神ルアール…何を考えてるのだ。」
「…神に選ばれし子は、代々皇家の伴侶として現れる。…ルアール様は、私に神に選ばれし子と結ばれるようにしたのでしょうか…。私は…人を愛する事をやめたのに。」
「…リゼ、祈願の歌人について聞いたか？」
「…？お父様？」
お父様が急に祈願の歌人について語り出した。
これが私の運命を左右することを知らずに。
「祈願の歌人ローズは、人を愛する事の良さを誰よりも理解していた。だが、ある事を機に、人を愛する事をやめた。そして、自身が木岩化することで、人を愛する事を封印した。それは、次なる祈りの歌人に人を愛する事を封印することと同じこと。…お前さんが人を愛す事をやめたのは…ローズの影響を受けたからだ。祈願の歌人は…本来祈りの歌と違い、愛の歌を歌うことが出来た。だが、愛を信じず、誰かと誰かの愛を祈る事で出来たのが祈りの歌だと聞いている。」
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作者名：有栖茶 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年1月15日 11時
