第6章 エピソード8 ページ31
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(僕は…何をやってしまったんだ。)
3年半以上リゼを遠ざけたのは僕の方なのに、今更彼女を好きになるなんて。
実は世界樹の作戦以降、ずっと考えていたんだ。
友達であるビアンカを必死に助ける彼女に、いつの間にか惹かれてしまった。
いつもそうだった。
彼女は友達のために行動する子だけれど、まだCクラスだった頃は少し優越感に浸っていたのか周りの子に優しくできてない時があった。
でもそれは…いつも僕に関連する事だった。
今考えると彼女のことについて理解出来た。
伯爵令嬢という存在だけれど、家族には愛されず僕という存在意義があった。
けれど、その存在意義がなくなってしまった時、あんな風になってしまうのは仕方なかった。
それに優しく出来ないのは当然のことだった。
僕を奪われぬよう必死になっていたのだから。
今になってようやくわかった。
僕は今完全にリゼの事が好きになってしまって、奪われぬように必死になって抱きしめてしまった。
彼女が泣く姿を他の誰かに見せたくなくて。
運命は時に残酷だ。
(リゼ…僕はどうしたらいい？)
僕が好きになった瞬間と、彼女が好きになった瞬間が重なってくれたなら良かったのに。
……全然眠れなかった。
今日は学校なのに、昨日あんな事があっては尚更だ。
(どんな顔してリチャードに会えばいいの…。)
こんなこと、3年半以上前にも同じこと考えた。
もう恋なんてしないと思ったのに。
いざ好意を抱かれるとどうしたらいいか分からない。
今月は誕生祭が開かれるというのに。
私は気が進まなかったが学院に行った。
SSクラスの教室に入ると、ビアンカ達がなにやら話していた。
みんなは私を見た途端、周りに集まってきた。
(えっ？えっ？)
「リゼ！誕生祭のパートナーってだれにするのー！？」
「えっ、それは…。」
「だって、リゼは誕生日迎えた1年後には成人でしょ？学院の卒業が22だし、そろそろ決めなきゃじゃん！」
みんなが期待した目でこちらを見る。
(どうしよう…。)
「…私はまだそういうの考えられないし、パートナーにしたいと思ってる相手はいないよ。パートナーを立候補されたとしても、断わるつもりだし。」
「……。」
「えぇー、つまんないの〜。リゼ、美人なのに。」
とみんながそう言ってくれていた。
…これで伝わったかな。
私はもう、恋をする気にはなれないということを。
こんな形で返事をしたなんて…私は最低だ。
(ごめんなさい、リチャード…。)
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作者名：有栖茶 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年1月15日 11時
