廃妃された皇女様 2nd season (ページ30)

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第6章エピソード7 ページ30

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リチャードが息切れした状態で目が合ってしまった。

…まさか、走ってきたの？

王族であるリチャードが走るなんてこと滅多にないのに。

「ど、どうしたの？」
「はぁ…はぁ…。いや、リゼに1つ聞きたいことが出来たから急いで走ってきたんだ。」
「…？聞きたいことって？」
「リゼ、もしかして誕生祭のパーティー、カナーレ王子をパートナーにしてる？」

……！

どうしてリチャードからアルの名前が出てくるの…。

アルの名前が出てくるという事は、リチャードの目には私とアルが友人以上に見えるの？

普通、皇女の誕生祭のパートナーには、恋人か婚約者を連れていく。

だからリチャードは聞いてきたんだ。

…でも、どうしてそんなことを聞いてくるの？

「ううん、アルはパートナーにしないつもり。というか、パートナーはいらないつもりだったの。」
「…そうだったのか？」
「うん、成人祭ならまだパートナーはいるとは思ったけど、別に成人する訳でもないし…。えっと、どうしてそんなこと聞いたの？」
「リゼが良ければだが、僕がパートナーとしてパーティーに参加したいんだ。」
「…！リチャード、自分の言った言葉の意味分かって言ってる…？」

そう、誕生祭のパートナーがいない時に、自分自身がそのパートナーに立候補する意味…。

それは”告白と同等”のようなものだった。

これは平民だった時の私でも知っていた。

義理の伯爵令嬢になってから社交界に出るようになったけど、誕生祭のパートナーに立候補されたのはこれで初めてだった。

だからこんなにも驚いている。

するとリチャードは少し顔を赤くした。

「もちろんだよ。」
「…そんな。」
「…ごめん、こんな時に。」
「……リチャードらしくないよ。そんな嘘つくなんて。」
「え？」
「だって…リチャードが私の事好きになるなんてありえないもん…。本当だとしても、どうして今なの…。私はもう、人を愛さないと決めたのに。」

スーッと涙が流れて、私は泣き顔を見られたくなくて顔を手で隠す。

すると、リチャードがどんどん近づく音がして、私は彼に抱きしめられていた。

……！！

「やめて！」

私はそう大声で叫んで、リチャードを遠ざけた。

っ！なんてことをしてしまったの！

「…！ごめん…。」
「…っ！ごめん、私また最低な事しちゃったね。前もそうだった。リチャードを困らせるだけ困らせといて、私ってほんっとに最低。…ごめん、私もう行くね。」

そう言って逃げるかのように歌人宮に急いだ。

私の心に応えるかのように、大粒の雨がザーッと降っていった。