取り敢えず、クレープ/ cino ページ25
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「チーノ。」
「はいはい。あーん。」
口にほんのり甘い生地が広がる。中に包んだ野菜達が新鮮味を保って芳醇な味覚を発散させる。私は彼が勧めてくれたそれをもごもごと咀嚼しながらフライパンに広げたクレープ生地を軽く冷ました。縁取りからして焼き加減は問題ないだろう。菜箸を使って裏面に返せば僅かに焼き色の浮かんだ生地が此方を見上げている。
「んまい。」
「いつでも代わるから遠慮せんでな。」
彼はそう言いながらもごもごと私が一口切り取ったクレープを頬張っている。しゃくしゃくとレタスを咀嚼する如何にも新鮮味を主張する音が彼から響いた。こうして甘過ぎない距離感で恋人としての会話を楽しむのが私達流だ。彼は私をべたへたに甘やかしているのだろうが、私は素っ気なく返事しても傷つかないこの距離感が好きだった。
「ん。でも不器用なチーノに任せるの心配。」
「な、失礼やなぁ。」
焼き加減を軽く確かめてまた菜箸で生地を返す。じゅ、と生地に焼き色のつくような食欲を刺激する音を立てる。くっつかない様に隣に置いた大皿に生地を盛った。彼はその間も別の大皿に生地を取って多種多様なクレープを作っている。中に生クリームと餡子の入った和風クレープ。キャラメルソースをふんだんに使用したバナナクレープ。先程私に勧めたレタスやトマト、ベーコンなどを巻いたサンドイッチ風クレープなど巻き方も中身も全てちくはぐだ。彼は苺と生クリームを次の生地に乗せながら、愉快と言わんばかりに唇の端を歪めていた。
「チーノ、楽しそう。」
「そりゃ、Aと一緒やもん。」
単純。けれどそれが良い。複雑だなんて私の頭ではきっと理解出来ないだろうから。私はまた生地を焼く為にフライパンに生地を落とし入れた。ムラがない様に丁寧にフライパンを回して。彼は出来上がったオーソドックスな苺と生クリームに埋め尽くされたクレープを美味しそうに頬張る。無邪気な彼はクレープを頬張る事に夢中な様で、鼻先に付いた生クリームにも気付いていない様子だった。幸せそうな表情の彼を軽く引き寄せて鼻先に接吻を落とす。事態を飲み込めていない彼はこれでもか、と頬を赤く染めて驚愕に満ちた表情で私を見つめた。
露骨な純愛書けますよアピール。
著 / 鵯
ジャムタルトの譫/grppen→←投機的ポルボローネ/knsm
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鵯(ひよどり)(プロフ) - ぽんずさん» 毎度お世話になっております野鳥に御座います。お気に召された様で何よりと存じます。お粗末様でした。 (2020年11月8日 22時) (
レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
ぽんず - こそこそ覗いておりました私です。私が大の甘党故タイトルに惹かれ読んでおりましたが御二方の菓子を結んだお話に今尚うっとりしております・・！口の中に広がる違和感、垣間見える狂気に今回も圧巻です。鵯様、アムリタ様、ごちそうさまでした！ (2020年11月8日 10時) (レス) id: cc7e22f34f (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - 1さん» 言葉は殊更に束縛されずに故に解き放たれた莫大な力であり、実体を伴わぬ矮小な存在であると思います。それは最早単語の域を超えた歪曲した慣用句でさえも正当化されるものである為、貴殿も気儘にお過ごしください。応援ありがとうございます。 (2020年10月25日 23時) (レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
1 - 聞いた事の無い言葉の羅列でどうにも良くならない頭がパンクしそうですが、読むのは勿論、知らない単語を調べるのも一つの楽しみになりつつあるので、これからもひっそりと応援させて頂きます。頑張ってください！ (2020年10月25日 22時) (レス) id: 3bc86cc6f5 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - あこさん» ありがとうございます。双方力を合わせて緩々と連載して参りますので、よろしくお願いします。 (2020年7月19日 10時) (レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鵯(ひよどり),アムリタ
x他1人 | 作者ホームページ：鵯
作成日時：2020年7月7日 9時
