天使のクリームホーン/ shorn ページ23
#正式名称 : クレルノ・デ・クレーマ
私が稚気であるのは痛い程に痛感していた。たった数十年生きただけの浅はかな人間が人間たるのを語るに値しないことを。打算された結果と打ち返される事実がこの世の真髄と疑わない私は彼の話を理解出来なかった。また同時に明確の無い拡大されたスケールに自分との差異と違和を感じるばかりでどうもむずむずと痒かった。
「漠然とした未来が嫌い。」
「確固たるプログラムがある方が怖いわ。」
愛とか今更言われても理解出来なかった。私は母親に愛を与えられた記憶なぞ皆無だ。良き娘であれと叩き込まれた記憶しかない。私はそれを正しいと信じて疑わなかったし、それが当然である様に強制されたからだ。
「パターン化したゆとり傀儡だから。」
「……おもろいなぁ。」
彼はくるくると笑って私の薬指を撫でた。其処にあるのは彼とお揃いのピンクプラチナゴールドの結婚指輪。シンプルながらも素朴ではないシックな作りの輪は私の心臓をきゅるきゅると締めてゆく。私は緩やかなる死を目前としても尚、それを見ぬふりで彼を茶化した。
「ね、シャオさん。」
「ん？」
ころん。彼と使用しているダブルベットで寝返りを打った。柔らかな高反発のマットレスが優しく身体を包む。ふわふわのタオルケットで身体をぐるぐる包まれて、すっぽんと頭だけ出して彼に微笑み掛けた。彼はそんな私を見てもただ余裕のある笑みを浮かべるだけで、私の幼心を酷く安心させた。
「幸せ。」
「うん。良かった。」
彼はそうやって阿呆の様にふにゃふにゃと笑う私をタオルケットごとぎゅ、と抱きしめた。彼の腕の中は酷く居心地が良い。このまま彼の腕の中で永遠に眠ってしまいたいと思うほどに。彼に頭を寄せて静かに眠る体勢を取った。彼は赤児をあやす様に背中をぽんぽんと撫でてくれてそのままふわふわと夢に浸かり始める。
「おやすみシャオさん。」
「うん、おやすみな。」
ふわり、と一つ欠伸を零して瞼を閉じる。優しく甘い匂いで肺を満たしている私は彼が悪どい笑みを浮かべていることなど分からなかった。私をそのまま甘味に落とし込めて灼熱の愛で私の身を焦がしていることなど私が知ることもなかった。
著 / 鵯
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鵯(ひよどり)(プロフ) - ぽんずさん» 毎度お世話になっております野鳥に御座います。お気に召された様で何よりと存じます。お粗末様でした。 (2020年11月8日 22時) (
レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
ぽんず - こそこそ覗いておりました私です。私が大の甘党故タイトルに惹かれ読んでおりましたが御二方の菓子を結んだお話に今尚うっとりしております・・！口の中に広がる違和感、垣間見える狂気に今回も圧巻です。鵯様、アムリタ様、ごちそうさまでした！ (2020年11月8日 10時) (レス) id: cc7e22f34f (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - 1さん» 言葉は殊更に束縛されずに故に解き放たれた莫大な力であり、実体を伴わぬ矮小な存在であると思います。それは最早単語の域を超えた歪曲した慣用句でさえも正当化されるものである為、貴殿も気儘にお過ごしください。応援ありがとうございます。 (2020年10月25日 23時) (レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
1 - 聞いた事の無い言葉の羅列でどうにも良くならない頭がパンクしそうですが、読むのは勿論、知らない単語を調べるのも一つの楽しみになりつつあるので、これからもひっそりと応援させて頂きます。頑張ってください！ (2020年10月25日 22時) (レス) id: 3bc86cc6f5 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - あこさん» ありがとうございます。双方力を合わせて緩々と連載して参りますので、よろしくお願いします。 (2020年7月19日 10時) (レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鵯(ひよどり),アムリタ
x他1人 | 作者ホームページ：鵯
作成日時：2020年7月7日 9時
