マカロン、擬似/ut ページ22
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あれもこれも、全部全部手中に収めないと気が済まなかった。
壁、天井、床に散りばめられてシャンデリアの灯りを受け、屈折させて燦々と七色の光を放出する宝石も、一度着てしまえばもう二度と纏わぬ上等なドレスも。
大理石に映る自身でさえ、全てを物にしたかった。
｢鬱！鬱はどこなの！！｣
｢はい。此処に。｣
ドレスの裾を持ち上げ、つかつかとヒールの音を谺させながら城内を少し練り歩いていた頃。
恭しく頭を垂れる男を睨み付け、どんな処遇を見舞いしてやろうかと逡巡する。
｢居たならいいわ。お腹が空いて仕方がないの。この前のスフレはあるかしら？無くても寄越して頂戴。今すぐによ！｣
｢はい。そうなさると思って既にご準備しております故…｣
どうかご容赦下さい、とでも後ろに続きそうな台詞を口から吐き、捲し立てた私を余所にエスコートを始める。
ヘラヘラと余裕そうな態度が気に入らない。
ふと鼻腔を擽る微かな紫煙と、女物の香水の混じり合った馨香が気に入らない。
何よりも、壊れ物を扱う様な手付きがどうも腹立たしくて仕方が無いのだ。
まるで私一人では歩く事さえ儘ならぬ赤子であると言われている様に感じて地団駄踏むのは一回二回の出来事では無かった。腸が煮えくり返りそうで、其れこそ四肢を切り落として傀儡に成り下げてしまいたい程に、である。
｢鬱。スフレの後はドレスの仕立てをして頂戴。お父様からお聞きになったでしょう？もうじき舞踏会らしいじゃないの。嫌になるわね。好きでもない男との、｣
その先は、何故だか私の口から吐露される事は無かった。
恐らくはこの男に怪訝されようと憂懼な言葉を掛けてでも貰いたかったのだろう。
かちゃかちゃと割賦の揺れる音、ぶわりと香る心地良い暖色、ふわりと靡くフラウンス。
もっと。もっと、もっともっともっと！！！！
｢ねぇ鬱。私からの命令よ。勿論、聞き入れるでしょう？お父様もお母様も、お姉様達だって屠って頂戴。こんな末っ子じゃあ満足足りない。王族継承は私を第一位にして頂戴。｣
勿論、貴方の地位も名声も、全て保障してあげる。
歩きずらいヒールのある靴なんかより、白馬の馬車の方がずっと良い。
国の政なんかより、色とりどりのマカロンを腹がはち切れそうになるまで食べ続けたい。
傲慢？いくらでも言えばいい。野心が無ければ更なる発展なんて望めっこない。
芯の弱い人間にくれてやる夢なんて、端からありはしないのだから。
著．アムリタ
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鵯(ひよどり)(プロフ) - ぽんずさん» 毎度お世話になっております野鳥に御座います。お気に召された様で何よりと存じます。お粗末様でした。 (2020年11月8日 22時) (
レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
ぽんず - こそこそ覗いておりました私です。私が大の甘党故タイトルに惹かれ読んでおりましたが御二方の菓子を結んだお話に今尚うっとりしております・・！口の中に広がる違和感、垣間見える狂気に今回も圧巻です。鵯様、アムリタ様、ごちそうさまでした！ (2020年11月8日 10時) (レス) id: cc7e22f34f (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - 1さん» 言葉は殊更に束縛されずに故に解き放たれた莫大な力であり、実体を伴わぬ矮小な存在であると思います。それは最早単語の域を超えた歪曲した慣用句でさえも正当化されるものである為、貴殿も気儘にお過ごしください。応援ありがとうございます。 (2020年10月25日 23時) (レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
1 - 聞いた事の無い言葉の羅列でどうにも良くならない頭がパンクしそうですが、読むのは勿論、知らない単語を調べるのも一つの楽しみになりつつあるので、これからもひっそりと応援させて頂きます。頑張ってください！ (2020年10月25日 22時) (レス) id: 3bc86cc6f5 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - あこさん» ありがとうございます。双方力を合わせて緩々と連載して参りますので、よろしくお願いします。 (2020年7月19日 10時) (レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鵯(ひよどり),アムリタ
x他1人 | 作者ホームページ：鵯
作成日時：2020年7月7日 9時
