Campus 86 ページ41
夜久side
もうすぐ暗くなるから羽鳥を送っていくことにした。
でもそれは建前で、本音は少しでも長く一緒にいたいから。
チラッと後ろを見ると、あと数分で「夜」の始まりを告げるかのように、めいいっぱい広がる地面に長く長く伸びる2つの影。
その影に距離はない。
そっと繋がれた手と手が、影が結ばれている。
その影を見て今更気がついた。
羽鳥が俺の横を歩いていることに。
いつも羽鳥は俺の斜め後ろを歩いていた。
なんでだろうとは思っていたけど、聞かなかった。
でもその意味がたった今分かった。
それが分かった途端に、凄く愛しく感じる。
夜「ははっ・・・」
嬉しくて思わず笑ってしまう。
『・・・?どうしたの?』
見上げる羽鳥。地面に溶ける影。
さっきよりも少しだけ強く握り返される小さい手。
夜「いや、なんでも・・・」
『・・・夜久君の隣歩けるなんて思わなかったな』
夜「え」
光りだした星を見ながら笑う羽鳥。
夜「俺も、羽鳥の隣に立てるなんて思わなかった」
同じように星を見る。
その近くで淡い光を放つ月。
前も、こんなことがあったなとふと思い出す。
『あの時ね、時間が止まったらいいなって思っちゃった』
夜久君も同じだったらいいなと言い、そっと離れる手。
『ここまででいいよ!』
夜「家まで送るよ」
『ううん、送ってくれてありがとう!また明日』
そう言って遠ざかる背中。
夜「おう、気をつけて帰れよー!」
一度振り返って手を振った羽鳥は夜に紛れていった。
今日は体育館が使えないから練習がなかった訳で、やっぱり疲れてないな。
家に帰って、一応、一応黒尾に連絡しとくか。
そう思いながら踵を返す。
帰宅して部屋に入ると、ベッドに座る。
すぐにメールを飛ばす気にはなれなかった。
黒尾だって羽鳥を好きなんだから余計苦しめるだけだと思ったけど、伝えない方が失礼だとメール画面を開く。
宛先をいれて、本文に簡潔に内容を打ち込んでいく。
送ればすぐに「送信完了」の文字。これを読んだら黒尾はどう思うだろう。
同じ人を好きになると、どちらかが傷つくのか。
このまま考えると沈んでいきそうな気がして、勢いよく立ち上がると風呂に入るために部屋を出た。
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ぱーぷる姫(プロフ) - yuk71121159さん» ご意見ありがとうございます!次回、小説を書く時は大人の展開を描けたらと思います。 (2月17日 23時) (レス) id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
yuk71121159(プロフ) - 羽鳥さんと夜久くんのこの先の展開が楽しみですが、キスで終わって欲しくなかったです。 (2020年3月23日 1時) (レス) id: cd96969519 (このIDを非表示/違反報告)
ひとみ@天かすっこ(プロフ) - イドリーさん» いえ、少し気になってしまったので....... (2020年1月30日 16時) (レス) id: f129b71bbe (このIDを非表示/違反報告)
イドリー(プロフ) - ひとみ@天かすっこさん» こんばんは。公式で下の名前で呼んでいる描写があったと思って書いていたのですが、きちんと確認しますね!すみません! (2020年1月30日 2時) (レス) id: 019d610005 (このIDを非表示/違反報告)
ひとみ@天かすっこ(プロフ) - コメント失礼します!夜久さんがオチで面白かったんですけど夜久さんって黒尾さんのこと鉄郎じゃなくて黒尾って読んでませんでしたっけ.......?間違ってたらすみません! (2020年1月25日 18時) (レス) id: f129b71bbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱーぷる姫 | 作成日時:2014年8月5日 20時