【ハイキュー!!】君と描くキャンバス【夜久衛輔】

Campus 80 ページ35

夜久side

羽鳥が泣いた時、どうしたらいいか分からなかった。




ドラマでもあるような、抱きしめて、胸貸すぜ的なことをするべきか迷って結局足は動かなかった。




失礼だけど、泣いた顔が綺麗でみとれていたから動けなかったのも間違ってない。



それに付き合っている訳でもない。好きでもない相手に抱きしめられても嬉しくないだろうし。





普段羽鳥は笑ってて、「泣く」なんてイメージ全然なくて、だからこそどうしたらいいのか分からなかったんだと思う。



そもそもなんで羽鳥が泣いているのか分からない。





誰かに虐められて苦しくて泣いたとか、転んで泣いたとかそういうのとは違うのはなんとなく分かったけど。



少しして、誰かが体育館に入る音がして見てみれば山本だった。

山本はどうしたらいいのか分からず慌てていた。で、目で訴えかけられた。





山(泣かしたんスか？)



普通に見たら俺が羽鳥を泣かしているの図。ってなるけどよく考えれば、もし泣かしたなら立ち尽くすのは最低だと思う。




羽鳥が泣き止んでマネージャーの仕事をしに行ったのを見て、山本が俺に話しかける。




山「は、羽鳥さん、どしたんスか！？」

夜「わかんねー。でも…辛そうだった」

山「………」


どうした？って声をかけて話を聞きたい気持ちは山々だけどこれから朝練だし、二人して抜ける訳にもいかない。




それに、あそこで抱きしめなくて良かった。もし抱きしめていたら羽鳥はもっと泣いただろうし。







多分羽鳥も望んでいなかったと思う。






モヤモヤした練習が終わって授業中、チラッと羽鳥を見てみるけどいつも通り授業を受けている…ふりをしてどこか別のところを見ているような感じだった。「上の空」っていう言葉が当てはまってる。




部活が終わって理由は聞けたけど、羽鳥を必要以上に苦しめないために根拠もないことをいった。





羽鳥は板挟みになっていて精神的に辛いはず。気づかれないように過ごすのは難しいんじゃないか。





泣くくらい辛かったんだ…


羽鳥の家の更に詳しい事情は分かんないから下手に口出せないけど、羽鳥の心が少しでも楽になればいいと強く願った。



もしも、また泣くことがあったら次は…………









次は、抱きしめられる関係でありたい。





一番は、笑顔でいてほしい。

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