【ハイキュー!!】君と描くキャンバス【夜久衛輔】

Campus 77 ページ32

トントン…






振り向けば医師がいて、念のために病室を出る。


覚悟もないまま無我夢中できたけど、朝練に間に合うかな。


ううん、今は医師の話を聞こう。


医「朝早くからすまないね」


『はい、あの、おばあちゃんは…』



医「思ったより早く病気が進行して、もう持ちそうにない。最善は尽くしましたが…」




ある程度覚悟はしてた。それに、やっぱり…というどこか諦めの気持ちも確かにそこにあった。


おばあちゃんと出かけるなんて思ってた日々が懐かしい。


そのためにバイトを始めて、慣れないながらも一生懸命やって、ようやくおばあちゃんと…





そんなときにもう長くはないなんて言われて、目の前が真っ暗になった。


お父さんもお母さんもいない。



それどころかおばあちゃんを置いて、海外に行こうなんて言い出して…


みんなを巻き込んでしまって…







とりあえず学校へということで歩き出したけど、心ここにあらずという状態だった。



いつ交通事故に遭うかも分からない足取りで、ようやく学校にたどり着く。



いつもより大分遅いけど、まだ朝練が始まる時間ではないから急いで準備すれば間に合う。





一番最初に入ってきたのは夜久君だった。





『おはようございます』





夜「おはよう。…って羽鳥、なんで泣いてるんだ！？」




そう言われて初めて気がついた。



視界がぼやけるなぁと思っていたら、そっか、涙か。




私、泣いてるんだ。









言われなきゃ気がつかないなんて、どうかしてる。




それも一番見られたくない相手に見られてしまった。





『…泣いてなんかないよ』



必死に言い訳したけど、さすがに自分でもありえないほどわかりやすい言い訳だった。



夜「どうしたんだ？」



そんな私の様子に慌てる夜久君。





涙が止まらない。






お願い、もうすぐみんなが来るんだから。







けど、涙は止まらなくて、それどころかどんどん溢れ出てくる。



泣いたら駄目なのに。みんなに迷惑かけちゃうのに。







キュッ…




足音。誰か入ってきたんだ。



慌ててタオルをとり背を向ける。




ささやかな抵抗でしかないけど、見られたくなかった。




少ししたら涙は止まって、大泣きした訳じゃないから目は腫れなかった。


でも、少しは赤くなってると思うけど…




無理矢理気持ちを切り替えて、朝練が始まった。

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