第5話:知ってる、けど。 ページ21
第5話
「おれもスパイク打ちたい!おれにもトス上げてくれよ!」
別れて練習を初めてから数分。
田中先輩の気持ちのいいスパイクを見て、日向くんはどうしたって耐えられなくなってしまったようだ。
レシーブの練習には全く身が入らず、とうとう影山くんに必死にアピールをする。
でも、影山くんの応えは、
「……嫌だ。」
だった。
それはもう不機嫌ヅラで、私も苦笑することしかできない。
レシーブがあってこそのトスと攻撃。レシーブがまともに出来ないなら、トスを上げる価値はないと、影山くんの主張は間違ってはいないと感じた。守れなければ、攻撃はできない。
とはいえ、その言い方も相まって、トスをあげない理由にするにしても、納得しろという方が難しくて。
「…………お、おれが満足にレシーブできるようになったら、お前はおれにもトス上げんのか。」
隠しきれない悔しさを滲ませながら、日向くんは絞り出すように影山くんに聞く。
「……勝ちに必要な奴になら誰にだってトスはあげる。試合中、止むを得ずお前に上げることもあるかもな。
でも、今のお前が『勝ち』に必要だとは思わない。」
それでも、影山くんの応えは無慈悲だった。
何故だか私も、とてもとても、悔しくなった。
バレーは本来、とても楽しい。でも、やりたいことが、自分の何かが原因でできない。その事実が何よりももどかしくて、悔しくて、やり切れないということを、知っているから。
「……それにレシーブはそんな簡単に上達するモンじゃねぇよ。」
「じょ、上達させるよ!」
上達させるよ。心の中で、もう一度強く、伝えた。
影山くん、日向くん、田中先輩、スガさんの視線が、私に集まるのを感じて、スっと体が冷えた。やめてくれ。見ないでくれ。そう思ってしまう。小心者が故に視線が集まるのはとても苦手だ。
「……っ」
でも、このまま黙っていたくなくて。
純粋にバレーが大好きな日向くんには、そのままの気持ちでバレーを続けてもらいたんだ。
バレーは楽しい。上手くなればなるほど。だから。
「日向くんのレシーブは、私が責任持って上達させる。
だから、試合前の金曜日までに10分、影山くんとのラリーが続けられたらトスをあげる約束をして欲しい。」
「!!、Aさん……!!」
影山くんの視線が鋭くなった。それでも、視線を逸らさずに、じっと彼を見つめる。
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しおり(プロフ) - 夢主さん» ありがとうございます🥲あともう少しで完結なので楽しく書き進めたいと思います☺️ (2022年10月24日 8時) (レス) id: e0e048fd48 (このIDを非表示/違反報告)
夢主(プロフ) - しおりさん» 笑笑ほんとに面白いです!めっちゃ今読みあさってます! (2022年10月23日 22時) (レス) id: e4dd308597 (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 夢主さん» はっ……どう、でしょう……? (2022年10月23日 21時) (レス) @page1 id: 0e2f0640dd (このIDを非表示/違反報告)
夢主(プロフ) - ちゃんと小学バレーローテしてないって事理解してるあたりバレーしてますよね😎 (2022年10月23日 21時) (レス) @page1 id: e4dd308597 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しおり | 作者ホームページ:http://nanos.jp/amakusa40/
作成日時:2021年8月24日 22時