プロローグ ページ1
プロローグ
「私、将来は全日本のリベロになる!」
走って、走って、走って。拾って、拾って、拾えば。拾い続ければ。私たちは負けない。コートにボールを落とさなければ。
それが、楽しくて、楽しくて。無我夢中で追いかけ、ボールと床の隙間に、手を滑り込ませた。
苦しくても、頭が回らなくても、足が重くても。あと一歩を踏み出して、鋭く、重いボールが手にあたって、跳ね上がるその感覚が、たまらなく、楽しいんだ。
「A、また身長伸びた?今何センチ?」
「175センチになってからもう見ないことにした。」
小学3年生から始めたバレーボール。
クラブチームはそこそこの強豪で、全国大会の出場経験もある。私たちの代はなんとかギリギリ全国に進んだ。女子はベスト16にも入れずに負けてしまったけれど。
ローテーションの無い小学生バレーで、私のポジションはセンター。レシーブが得意だった私は、広範囲の守備を任され、同時に、時折スパイクを打っていた程度だった。
レシーブが好きだった。繋いで、繋いで。遠くに弾かれたワンタッチボールに諦めず食らいつき、ベンチの椅子にぶつかりながらあげた時。
ブロックが間に合わず、フリーで打たれた鋭いスパイクを滑り込んであげた時。
わっと沸いた会場。士気が上がるチームメイト。みんなの笑顔。なによりも、大好きだった。
なのに。
そのまま中学にあがり、3年生になって。元々高めだった私の身長はメキメキと伸び、チーム1の高身長となった。当然、目標としていたリベロにはなれなかった。
中学のチームもそこそこの強豪で。
1番の高身長の私に任されたポジションはミドルブロッカー。エースではないものの、ブロックやスパイクが私の主な仕事になった。
でも、スパイクはあまり得意ではなかった。
リベロポジションには小柄な同級生が選ばれた。それはそうだ。ボールの下に入り込むには私のこの体格は適していない。それはそうだ。それは、そうなんだ、けど。
「勝とうね。絶対。」
「……、うん!」
ピーッと笛が鳴り、試合が始まる。
総体連の決勝。これに勝てば、全国に行ける、大事な試合。
勝ちたい。中には、小学生の頃から一緒にプレーしているメンバーもいる。ずっとずっと、一緒に繋いできた、大切な仲間。そのチームメイトと一緒に、全国の舞台に立ちたい。例えそれが、私が本当にやりたいポジションじゃなかったとしても。
私が苦手な、スパイクを打つポジションでも。
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しおり(プロフ) - 夢主さん» ありがとうございます🥲あともう少しで完結なので楽しく書き進めたいと思います☺️ (2022年10月24日 8時) (レス) id: e0e048fd48 (このIDを非表示/違反報告)
夢主(プロフ) - しおりさん» 笑笑ほんとに面白いです!めっちゃ今読みあさってます! (2022年10月23日 22時) (レス) id: e4dd308597 (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 夢主さん» はっ……どう、でしょう……? (2022年10月23日 21時) (レス) @page1 id: 0e2f0640dd (このIDを非表示/違反報告)
夢主(プロフ) - ちゃんと小学バレーローテしてないって事理解してるあたりバレーしてますよね😎 (2022年10月23日 21時) (レス) @page1 id: e4dd308597 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しおり | 作者ホームページ:http://nanos.jp/amakusa40/
作成日時:2021年8月24日 22時