それだけ.7 ページ8
「ふぁあああ、ねむい」
只今の時刻、夜の12時。
週末だからという理由で大量の宿題が出されて、それを処理中。
まあ明日土曜やし、そこまでしてやらんでもええんやけどね。
休憩、と称してかれこれ30分はスマホをいじっている。
そんな時でも、忘れられない、先日のできごと。
『俺、Aの前でぶりっこしとるだけや』
力強い、宮の手。
まっすぐな、目。
『私、好きな人おんねん』
ーー嘘を、ついてしまった。
今思えば、なんであんな嘘ついてしまったんやろか。
「好きな人おる」って言って、宮に、嫉妬されたかったんやろうか。
「なんでそんな駆け引きみたいなこと」
私は駆け引きとか、そういうタイプやないのに。
ていうか私、ほんまに宮のことを好きやないよね？宮のことは、友達よね？
もう自分がよくわからん。
どうすればいいんやろ。
ピコン、と、無機質な音が部屋にひびく。
LINEやろか。
そう思いスマホを見ると、みわからやった。
『A、たすけて！』
いきなり、たすけて、なんてびっくりする。
「どないしたん、大丈夫？っと……」
もう慣れたスマホで、みわにおくると、存外すぐに既読がついた。
『日曜、鈴宮と遊ぶことになった！！』
「おお！！」
すごいね、よかったなあ。
そう送ると、『でもな』と返ってくる。
……嫌な予感しかしない。
『緊張するから、Aも付いてきてくれん！？できれば男子1人連れて』
うそやろ。
誰でもええんやったら、山瀬でええか。
「山瀬でええんなら、私も行くよ……と」
『まじで！あんがとうなあ』なんて返信がくると、仕方ないなあって気分になる。
山瀬とのLINEをひらいて、日曜、ひま？という文字を打つ。
これまでの経緯を山瀬にLINEで説明して、それから、また課題をしようとノートを開いた。
10分はたったと思う。
やはりまたLINEの通知がして、山瀬とのトーク画面をひらく。
『ええで、俺も暇やったし』
おし。
「ありがと」と送って、今度はみわとのLINEをひらく。
ええんやって、そう送る前に、また響く無機質な音。
そこには、衝撃の文字が書かれてあった。
あつむ、という名前と、バレーボールのアイコン。
『Aよろしくな、宮侑や』
……うそやろ。
既読をつけないようにしながら、この事実をうけとめる。
宮とは、「好きな人おる」って言ってから、なんて言えばいいんかわからんままやった。
……どうすれば、正解なんやろうか。
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作者名：やふ | 作成日時：2018年7月13日 21時
