それだけ.10 ページ11
「バレーの試合でな、応援しとった女子がおったらしいんやけど、その子がプレーを邪魔したとき、結構悪く言ったらしい」
え
「まあ試合邪魔されたら誰でも怒るやろ」
そんくらい勘弁したってや。
なんか私最近、宮のことばっかかばっとる気がする。
「そこや。でも悪意なかったらしいで」
宮がバレーが1番っちゅうのは誰もが分かっとることやし、しょうがないんやろうけどなあ。
そう付け足していう山瀬に、やっぱ宮はすこし怖い人なんかなあと思った。
「ところでA、なんでそんなこと聞くんや？｣
やっぱりまだ私が宮を好きやないかって疑っとる顔や。
「ほんまに何にもないで。ただ気になったから」
「……そうならええけど」
よくはないやろ。
そう心でツッコミを入れて、また前の2人を見る。
……と、信じられない光景が私の目に写った。
「あれ宮？」
山瀬はうそやろ、という顔をしてばっと前方をみた。
ちょっと苦笑いして、困ったようにこちらを見る。
「噂をすれば、やな」
……やっぱり。
私の目が正しければ、いるのは宮侑とバレー部であろう人たち数名。
「あかん、これバレたら面倒なことにならん？」
噂とかたったらめんどくさそう、と、付け足して。
でも、私は単純に、噂が面倒、ってだけやなかったかもしれん。
いま気になっとる宮侑に、変な誤解をされたくなかっただけかもしれん。
こういうとこが、自分で卑怯やなって思う。
「そう？俺は別にええよ｣
そう言って少し面白いものを見つけたような顔になった山瀬に、うそやろ、と嫌な予感がした。
「みわ、鈴宮」
山瀬が声をかける。
「あそこ、宮たちおるで」
宮たちは私たちと同じ方向に向かっているので、誰かが後ろを向かないと私たちはバレない。
「わ、ほんまや」
「すごいタイミングやね」
うん、と言う前に山瀬は私の腕を引っ張る。
ぐい、というように強く、強くひく。
「ちょっとAつれてくで」
……は？
いきなりのことで頭が動かなかった私は、運動部の山瀬にひっぱられるまま前へぐんぐん進む。
わざと宮たちに気づかれようとしている行動。
「ちょ、何しとるん？私バレたくないんやけど」
そうすると、こちらを振り向いてにやりと口角をあげた。
その仕草がとても色っぽくてーーー見惚れる。
「賭けにでるぞ」
そんな私なんか気にしないかのように、山瀬は進んでいく。
みんな言うやろ？
『時には強引な男子がいい』って。
……それを今少し、理解した気がする。
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作者名：やふ | 作成日時：2018年7月13日 21時
