それだけ.0 ページ1
それだけなの。
さわがしい昼休み、美味しいお弁当。
未だ反応がないみわに、もう1度いう。
「名前がおんなじ、それだけなんよ」
「ああ、宮兄弟やろ？」
分かっとるのに聞くのねみわさん。
「おん、ほんまに勘弁してほしいわあ」
「ええやん、あんなかっこええ人達と同じなのも」
《宮兄弟》
それは私の耳から離れない言葉。
「ね、宮Aちゃん」
わざとらしく《宮》というのを強調して言った桐山みわは、ちょっと笑っていた。
「酷いわあ、同じ名前になったら多分わかるで」
《宮兄弟》
それは、うちの高校で人気を誇るふたり。
強豪のバレー部のスタメンらしく、顔もかっこいいということで学年を超えて人気、どころか他校にもファンがいるとか。
「なあ、Aはさあ、宮たちになんも思わんの？」
そして私、宮A。
そんなふたりと名前がおんなじなのも少し慣れた。
「思うで！かっこいいなあとか、同じ人間なんよなあとか」
「でも恋愛的ではないと」
「よおわかっとるやん」
私がとか、恐れ多いわ。
付け足していうと、「確かになあ」とみわは言った。
「でもかっこええとかは思うんや」
「もちろん、あのルックスと身体能力やで!!?」
「せやね」
くすくす笑ってる。
「前に見たことがあんねん、ラブとライクのちがいを」
「ほおほお」
興味深そうに聞いてくるから、みわっていい子やと思う。
「ライクはは、〜やから好き。
ラブは、〜やけど好き、らしいで」
「なるほど、わからんなあ」
さすが国語が苦手なこのおんな。
泣いとる子供を見てなんも思わんだけはあるわ。
「例えばな、かっこええ、宮みたいな人がおるとするやん？それは、かっこええから好き、やからライクなんよ」
うんうん、と首を縦に振るみわ。
「ほんで今度は顔はあんまかっこよくない人がおるとすると、それは、かっこよくないのに好き、ラブなんやって」
他にもいろいろあるんやろうけど、噛み砕いたらこうやとおもう。
「なんかわかったわ！」
「つまりな、こういうこと」
神妙な顔つきをしてみわを見る。
それに気づいて、ゴクリと唾を飲んだみわ。
「私のはライクで、ラブじゃあないんよ」
「なんだ、そんなこと」
ケラケラと2人で笑う。
「まあ、私らとあの人ら、関わりはないやろうけどなあ」
「うん、そっちの方がええわ」
「そうやね」
そう言って過ごした昼休み。
この時はまだ、《あの宮》とこれから関わっていくなんて思いもしとらんかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やふ | 作成日時：2018年7月13日 21時
