1話 ページ1
いつもと変わらん練習やった。
「宮君!侑君と治君。来てもらえますか」
練習中の体育館に顧問の先生の声が響いた。双子が呼ばれることは珍しくない
何かとやらかす二人やから。信介もまたか、みたいな顔しとる
特に侑は練習を止められて機嫌の悪そうに向かっていった。ボールかかえたまま行くんはやめんかい
あまり真面目そうでなかった双子が、先生から一言話聞いた瞬間一気に真剣になった
というよりも、顔がこわばった。侑の抱えていたボールがコロンと体育館の外に転がっていく
二人はそれを気にすることもない
チームメイトも何だろうと、視線をそちらに向ける
先生は少し話して、俺たちにお疲れ様、と声をかけて体育館を去っていった
先生が去った後、双子は一歩も動かない
それどころか、ボロボロと泣き出した
あの、試合で負けても泣かん二人が、声を出さず、噛み締めるようにして泣いている
それは辛い事ではなく嬉し涙だと分かる表情やった
「どんだけ感動する話しされたんやろな」
チームの誰かがぽつりとつぶやく
それから暫く泣いた双子が目を真っ赤にして、戻ってきた
「あの、今日帰らせてもろてもええですか」
「行かなあかんとこができて」
「お、おう、、気いつけや」
何に気つけんねん
監督の返事に思いっきり心ん中で突っ込んだが、声には出えへんかった
双子の行かなあかんとこが分かってもうたから
双子の泣くほど嬉しいことが分かってもうたから
監督の許可を得た双子は我先にと帰って行った
これまでのどの走りよりも速かった
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:デカプリン | 作成日時:2022年9月28日 0時