…セイトシ… ページ7
・
『…ガガッ…ケンタロウ、マエダナオ……ザザッ……トウゴウ…ピガガッ
以上……名が……ピー…にて戦死………A…ザッ…は…血多量により
…亡…………ぎの……ースです………式会社………は……』
……トウゴウ、A……。ジブン達の名だ。戦死、死亡……。
ジブン達は死んだのか。いや、心の臓は動いている。
トウゴウの様子から見て、このラジオの放送はどうやらおかしいらしい。
「……トウゴウ、大丈夫か。しっかりしろ」
「……！……済まない、少々、驚いてな……」
トウゴウはそのままふらふらと膝から崩れ落ちた。まるで
この世の終わりでも見たかのように、力無く。
「…………」
「…………」
沈黙。いつの間にか日が暮れ、部屋の隅へと影が落ちていき、
やがてすっぽりと部屋を覆った。目の前で膝を突いたまま動かない、
この男の心でも写し取ったかのように。
「……るぞ」
先に口を開いたのはトウゴウだった。顔を上げ、こちらの目を見つめる。
その目には、仄かな怒りと、確かな決意が見えた。
そして静かに、燃えている。
「一刻も早くここを出るぞ。私達はどうやら、のんびりとしている訳にはいかんらしい」
「……ああ、分かった。しかし、お前の話によるとここは、とても広いらしいな。しかもまだ２棟あると」
トウゴウによるとこの建物は５階建ての寮で、それもとても広いそうだ。
こんなものがあと２棟ある。瓦礫が邪魔をしている所為で、
一向に進んだ気もしない。出入り口は各寮にあるそうだが、１カ所しか無いらしい。
渡り廊下はいずれも２階。我々の体力も随分と落ちているらしく、階段の
上り下りをするだけで、かなり息が上がってしまう。
……面倒なことだ。
「そうだ。だがしかしそれは仕方のないこと、出来る範囲で良い。少しでも
足を速めたり、移動距離を長くしたりして出来るだけ脱出時刻を早めれば良い」
いつもの調子より、少し早まった喋り。
生きる事への執念。ジブンにはそう見えた。
まだ死ねない。まだ死なない。
まだ生きる。生き抜いてみせる。
そう言っている様に聞こえる。
ふと思った。ジブンは恐らく、こいつと似ていたんじゃないのか。
こいつと、同じ事を思ったことが、あるんじゃないのか。
『まだだ……！まだ俺は生きる……！生きて、生きて、生き抜いてやる……！』
＿＿＿ひとつ。思い出した。
『俺』は＿＿＿。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わいんれっど(プロフ) - オレオレ詐欺さん» ありがとうございます、 嬉しいです！ これからも頑張ります！ (2017年8月30日 18時) (
レス) id: 19107a5dca (このIDを非表示/違反報告)
オレオレ詐欺 - わいんれっどさん» てかこの作品面白かったよ。これからも頑張れ (2017年8月30日 17時) (レス) id: e9f3d72a12 (このIDを非表示/違反報告)
オレオレ詐欺 - わいんれっどさん» イベントにそういうつもりで参加しても伸びないんじゃないか？あれはただの荒らし魔で、詐欺投稿。 んま、作者がそう思ってるならいんだけどさ。 (2017年8月30日 17時) (レス) id: e9f3d72a12 (このIDを非表示/違反報告)
わいんれっど(プロフ) - 応援してくださると嬉しいです！ (2017年8月27日 23時) (レス) id: 6090b3946f (このIDを非表示/違反報告)
わいんれっど(プロフ) - ＬＵＮＡさん» 済みません。わざわざありがとうございました。 (2017年8月27日 22時) (レス) id: 6090b3946f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わいんれっど | 作成日時：2016年8月28日 17時
