第123話 ページ33
海斗が歩みを止めると、目の前に特級呪霊が背に壁をつけてカタカタと震えていた。
もしかしてと海斗を見れば、海斗は楽しそうに狂気に満ちた笑顔をした。
そうか。海斗は呪霊を探して歩いていたんじゃない。怯えて逃げる呪霊をゆっくりと追い詰めていたのか。
海斗の行動を理解すれば更に恐怖が増す。
恐怖から逃げるために特級呪霊は無駄と思える抵抗を始めた。
海斗に向かって飛ばされた呪力。
海斗はそれを振り払うように手を上から下に降ると呪力は弾け消える。
「ヒィっ……。」
圧倒的力の差に特級呪霊は背に壁という逃げることは困難な状況でありながら、後退りを続け、パニック状態に陥っていた。
その状況をただ1人、楽しんでいる海斗。
私は海斗を止めようにも足は床に縫い付けられたかのようにまったく前に進まない。なら、声をかければと口を開くが、音を発することは無かった。
「なぁ……。お前は親父の命乞いに耳を傾けたか?ねぇよな。呪霊だもんな。でもお前の命乞いには応えてくれって?随分虫のいい話だな。」
海斗のその声は静かで
重く
すぐ後ろに死神がいて首に鎌を当てられている様に感じる確かな死
生唾を飲み込むと同時に特級呪霊の首が私の足元に転がった。
「はっ……。」
一瞬何が起こったのかわからなかったが、海斗が特級呪霊の首を切ったのだと理解した。
「海斗……。」
絞り出すように彼の名前を呼ぶ。
「……戻ろう傑。親父が寒がってる。」
私の顔を見ることなく海斗は踵を返し、私はそれについて行った。
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紫陽花(プロフ) - なうねうさん» ご指摘ありがとうございます。対応させていただきます。 (2021年2月28日 20時) (レス) id: 3b41d3a8b8 (このIDを非表示/違反報告)
なうねう - オ-リ-ジ-ナ-ル-フ-ラ-グ-が立っています。ルール違反ですので外してください。 (2021年2月28日 15時) (レス) id: 7dc0e72ef0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫陽花 | 作成日時:2021年2月27日 15時