濵田の場合 (ページ14)

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14.大学生の場合ページ14

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「それでは、かんぱーーーい！！」

グラスのぶつかる音が個室に響く。

2回生の頃ゼミで仲良くなったメンバーは、4回になった今でも定期的に集まっては酒を飲んでいた。

元気いっぱい音頭をとるやつ、いい具合に酔えば歌い出すやつ、それに合いの手を入れるやつ、それを見て大声で笑うやつ。

そんな仲間たちと一緒飲むのも今日が学生最後だった。

『いいメンバーやな』

私が思っていたことが横から聞こえて、思わず濵田を見た。

『今そう思ってたやろ？』

「なんでわかるの？」

『俺はマジシャンやからな』

「マジックなら見ないよ」

濵田はポケットに伸ばした手を止めた。

その中にトランプがある事も、やり出したら永遠に見せられる事も、今までしつこく付き合わされた事を思えば、容易に見通せる。

『釣れへんな～』

「餌がマジックではね」

濵田は珍しくビールを飲んでいた。

その姿に、濵田にとっても今日が特別なんだと感じさせられる。

就活という荒波に揉まれ、泣きたくなるような日々を乗り越えた私たちは、春から晴れて社会人になる。

実家を継ぐやつ、公務員になるやつ、大手企業にいくやつ、上京するやつ、留学するやつ。

ここまでバラバラになるのか、笑いたくなる。

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