青春 (ページ12)

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田中樹ページ12

『……寒っ！』

秋ももう半ば。

委員会の仕事を終え、学校を出た頃にはもう外は暗く、空気は冷たかった。

『はぁ…1人とか寂しすぎるだろ』

1人で暗い中帰るのって結構虚しい。

どうせなら音楽でも聴きながら帰ろう。
そう思ってスマホを取り出した時、LINEが届いた。

樹:校門の外にいるよ

慌てて校門の外に出ると、見慣れた白い車が。

「迎えに来ちゃった」
『…ごめん、良いのにそんな』
「嫌、かわいい彼女をこんな暗い中帰らせるバカいるかよ」

いつもはそんなこと言わないくせに。

本当ずるいよね。

「今日、ちなみに何の日か知ってる？？」

『1年記念日』

「覚えてたんだ、偉いじゃん」

『子供扱いしないで』

カフェでバイトしてた樹に一目惚れして2年。

顔見知りになって1年9ヶ月。

連絡先を交換して1年2ヶ月。

彼が大切な存在になって丁度1年。

『……忘れる訳、ないじゃんか』

「ははっ。俺の事好きだもんな？！」

『うるさい』

かわいげもない私をいつも受け入れてくれる人。

『今年で樹、大学卒業か』

「そーよー。Aは高校卒業かぁ」

『また遠くなる』

歳上の人と付き合うんだから、仕方ないって思ってた。

でも、でも。何故か悲しくて、モヤモヤして。

「いつもAはそうやって言うけど」

「俺だって、遠いなって感じてる」

赤信号でゆっくり止まった車。

家まで後少しだ。

「俺に、大学生って良いなって、きっとかわいい子いるんだろうなって嫉妬してくれるけどさ(笑)」

「どうする…？？俺の方が実は嫉妬してたら」

冗談っぽく笑う君。

『もう少し、遠回りしてよ』

君と離れたくない、1年記念日。