九九 ページ49
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「…わ、私に…?」
Aは頭に乗せてもらった、花冠を見つめた。奇妙丸に目線を合わせているAに、奇妙丸はAの髪を触った。
「母上と同じで綺麗だ…」
奇妙丸は独り言をぽつりと零した。
…Aはまるで、小さくなった信長に言われているような気分だった。それはそうだ。信長と信行は兄弟で、信行には信長と同じ血が流れている。薄くなろうとも、奇妙丸にも信長の血は流れているのだ。
「…あ、ありがとう」
奇妙丸はにっと口角を上げると、Aの腕を引いてどこかへ向かう。Aは戸惑いながら、ついて行く。奇妙丸は城門ではなく隠れた穴から城を出ようとした。Aは流石に足を止めた。
「きみ、何処に行く」
「父上がよく行く所です!」
「護衛を付けなければ…」
「奇妙丸がいます…!」
奇妙丸は跡継ぎなんだ。まだ、自覚がないのか、あまり自分の保身を考えない。だが、その姿は信長と似てるかもしれない。
自ら囮なってやればいい、とか馬鹿なこと言って…そう言えばこの先は信長と初めて鷹狩り行ったところだったかもしれない。
「着きました〜!!」
城下が見渡せる崖。嗚呼、やっぱりここか。Aが初めて織田に来て…倒れて…。
多分会ったばっかりのあの時から信長に心が揺れていた。
頭にのせられた花冠を取って、ラベンダーの花びらを撫でる。ふと、話し声が聞こえた。
Aは黙って、奇妙丸を伏せさせた。
「母上っ…!?」
「黙れ」
Aの一層低い声に奇妙丸は顔を強ばらせる。
刀は奇妙丸の持っているものと自分の短刀…脇差ぐらいだ。A1人では奇妙丸は守れると確信出来なかった。
まともに左手は刀が握れない。片手と両手では何もかも違う。
「朝倉、浅井…そして武田だ。あの信長も苦しくなるだろう」
「まだ決まった訳じゃないだろう?」
朝倉、浅井、武田それを聞いてAは一つ、読み取った。《信長包囲網》だ。
信長が朝倉に攻め込もうとしているのは知っている。そして、浅井は信長を裏切るだろう。
袋の鼠だ。
そのとき、パキリとすぐ近くで音がした。
奇妙丸が動揺して、力み近くの枝を踏んでしまったようだ。
そして、それに会話は途切れる。
足音は遠くへ逃げた。
「戻るぞ、きみ」
「は、はい…!」
二人は囁きながら、急いで城へ駆けた。Aは違う道を行くように奇妙丸に指図し、Aはそこに立ち止まった。
「君お姫さまの割には頭が切れるようだ」
現れたのは、金髪の男と紺色の髪の男だった。
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大手裏剣(プロフ) - 月夜さん» いえ!こちらこそありがとうございます。10月始めまでには公開出来るように頑張ります! (2019年9月28日 22時) (レス) id: 71bd857e36 (このIDを非表示/違反報告)
月夜 - 大手裏剣さん» あ”あ”あ”(( レスありがとうございます!! 続編、楽しみにしてます^^ 体に気をつけて頑張ってください!! (2019年9月26日 22時) (レス) id: fafc33f615 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 月夜さん» おわわ!!めっちゃ嬉しいです!私も信長様好きです。惚れました。恐らく、近頃続編が公開出来ると思います!楽しみにして下さると嬉しいです!! (2019年9月26日 22時) (レス) id: 71bd857e36 (このIDを非表示/違反報告)
月夜 - 一気読みしました!! オリジナルBL読むの初めてだったんですが……………。 どちゃくそ好みでした(( いや、信長様イケメンすぎか。惚れるわ。更新頑張ってください!! 応援しています^^ (2019年9月26日 18時) (レス) id: fafc33f615 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 月希さん» 出来れば…私のボードでお願いします。リクエストはお受けしますよ。 (2019年8月8日 11時) (レス) id: 71bd857e36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:大手裏剣 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oh19years/
作成日時:2018年9月14日 21時