98話 ページ9
「お兄ちゃん！僕、試合勝ったよ！」
彼が無邪気な笑顔で言うものだから。
＿＿＿俺はこの感情の名前を知らない。
「そうか、おめでとう！一緒に頑張った甲斐があったね。俺も嬉しいよ」
濁り渦巻く俺の心中も露知れず三郎くんは変わらずどこまでも輝く透き通る笑顔だった。
それを公園での練習の度に見せつけられるもんだからそんなもやもやを抱えている俺の方が馬鹿なのではとも思えた。
事故前の俺だったら、意地でもコートに立とうとしたと思う。
俺は"今"を選んだ。
･･･････････････････････････････････････････
｢だからサポートに回って
お前らの力になろうって決めたんだ」
セッターとしてキャプテンとして誰が見ても認める程の、努力を積んできた。
間違いなく俺達の目指すべき"光"なのだ。
そんな光への思いを言葉にする。
｢俺のプレイスタイルを初めて理解して助言して下さったのは及川さんでした。
その時の尊敬の念を忘れたことはありませんし、今でも変わりません。
…あなたがそう決めたなら誰も文句は言えないでしょうけど、
それでも待っている人は、大勢います｣
｢ははは…嬉しいな｣
及川さんは力なく笑い
箸を持ち直しメンマをつまんで口に運ぶ。
それを飲み込んで、
｢誰がなんと言おうとプレイヤーに戻るつもりは無い｣
本気の言葉。真っ直ぐな真剣そのものといった眼差し。冗談で言っている訳じゃない。
｢…あいつに会わないのは、その為ですね｣
聞いても何も言わずにチャーシューを頬張る。
しかし正解と言わんばかりに彼は口角を上げていた。
影山は及川さんの見舞いにほぼ毎日通いつめ、その身を呈して動かなかった右手を治した。
＿＿＿及川さんに一番プレイヤーに戻って欲しいと願っているのは影山なのだ。
もし会ったのなら、決心が揺らいでしまうだろうから。
あいつがどこまでも真っ直ぐな奴だから。
…それでも。
｢それでも、会ってやって下さい。
あいつは貴方の心を大きく揺さぶるかもしれない。
だけど、会って及川さんの口で話してやってくれませんか｣
俯いて良く見えなかったがこの時彼が半熟卵を掴み損ねたのはきっと涙ぐんでいたからだろう。
俺はいつの間にか箸を止めていたらしく、
ラーメンはすっかり冷めてしまっていた。
｢延びちゃいましたね、麺｣
及川さんも麺はまだ沢山残っていた。
｢これ位が丁度良いのさ｣
＿＿時間はお構い無しに俺達を置き去っていく。
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タマじろう(プロフ) - 好きです！！！！！！ (2018年2月5日 19時) (
レス) id: b5d9019b7f (このIDを非表示/違反報告)
かんとりーまあむ(プロフ) - 太宰LOVEさん» 本当にすみません( ; ゜Д゜)私も気になります…取り敢えず3月に入ったら更新再開させて頂こうと考えていますので…応援ありがとうございます、頑張ります！！ (2018年1月11日 21時) (レス) id: b3b236b351 (このIDを非表示/違反報告)
太宰LOVE(プロフ) - 及川さん…続きが気になります！負担にならない程度でいいので頑張ってください！応援して待ってます！ (2018年1月11日 20時) (レス) id: cec77dea89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かんとりーまあむ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hagen279061/
作成日時：2016年12月10日 16時
