95話 ページ6
確かにあいつは断言した。
俺はそんなの信じる奴は夢見がちな馬鹿だと決めつけていた。言い聞かせていた。
その夜更け、ふと目を覚ました。俺の右手が返されていた。
もう一度、あの言葉を思い返す。
「奇跡も、魔法も、ある…」
自らの口で噛み砕く様に呟いてた。
神経が繋ぎ戻された右の掌を見つめながら俺はふと思った。
奇跡が起こるというのは現実的ではない。
起きるという方が珍しい。それでも人間は奇跡が起こることを願って信じるものだ。俺もあれから何度奇跡を願った事か。
しかしそれが頭の中に浮かぶ度に必死に揉み消した。
既に唯一の俺の希望であった筈の約束をへし折られてるのに。
飽きるまで信じて信じて信じ続けた先、報われない絶望に再び勝てる程俺は強くない。
あれから、信じる事から、逃げていた。
ただただ怖かったのだ。
なのに、あいつの目は俺を映していた。
俺はひねくれてて、素直じゃなくて、我儘で。
本当の自分が分からないどうしようもない馬鹿。
俺の目の前には生粋の馬鹿。
どこまでもまっすぐで純粋で子供で。
同じ馬鹿でもあいつは、
あまりにも眩しすぎた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
バァンッ
急に部室のドアが開け放たれた。
「こぉるれぇぇええバレー部！！
お前ら何時だと思っとるんだぁ！
さっさとけぇれ〜っ」
その人物は通称鍵閉めのおっちゃんだった。
鍵がちゃんと閉まってるか最終チェックに学校中を回るあれの人だ。
部室の時計は夜9:30を指していた。予想通り及川さんは顔をしかめて言うのだった。
「げ、施錠妖怪ジジイ」
ごく一部でこう呼ばれることもある。
何故かと言うと、長年培ってきた施錠技術かなにかで毎度閉め忘れは無く完璧である事と、
「あんだとぉ！？ガキャあさっさと帰って母ちゃんの飯たんまり食えってんだっつのっ」
この御歳72とは思えない、名物の元気な喚き散らしっぷりである。木刀を携えている姿は国語の教科書で読んだ小説の人物を彷彿とさせる。
「はいはいわーかりましたよっ
ほら、国見ちゃん出ちゃって！」
表情は先程のしかめ面ではなく、明るかった。相変わらず切り替えが速い。
「…はい」
嫌よも嫌よも好きのうち。
何だかんだ俺達はおっちゃんのことが好きである。
「てんめぇ及川ぁ、はいは1回だろ！」
「はーあーい」
親しそうな話ぶりからして及川さんは殆ど遅くまで残ってるのだろうか。
…そんな遅くまで何をしているのだろう。
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タマじろう(プロフ) - 好きです！！！！！！ (2018年2月5日 19時) (
レス) id: b5d9019b7f (このIDを非表示/違反報告)
かんとりーまあむ(プロフ) - 太宰LOVEさん» 本当にすみません( ; ゜Д゜)私も気になります…取り敢えず3月に入ったら更新再開させて頂こうと考えていますので…応援ありがとうございます、頑張ります！！ (2018年1月11日 21時) (レス) id: b3b236b351 (このIDを非表示/違反報告)
太宰LOVE(プロフ) - 及川さん…続きが気になります！負担にならない程度でいいので頑張ってください！応援して待ってます！ (2018年1月11日 20時) (レス) id: cec77dea89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かんとりーまあむ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hagen279061/
作成日時：2016年12月10日 16時
